自分の身は自分にしか守れない

ネット上には溢れるほどの情報が日々投稿され、閲覧されている。私たちもスマートフォン一つで、ツイッターやインスタグラムなどのSNSを通して自分の意見を簡単に世界に発信できることができる。投稿一つで誰もが有名人になるかもしれないし(バズ)、人生を失うかもしれない(バイトテロなどによる炎上)。そんな投稿一つの拡散で、「天国と地獄」を感じることができるプラットフォームこそ、SNS・インターネットである。

昨今ネット上では著名人に対する誹謗中傷がエスカレートしていることが社会問題になっている。最近ではリアリティーショー番組「テラスハウス」に出演していた女子プロレスラーの木村花さんが、誹謗中傷を受けつつ亡くなったことが記憶に新しい。ネット上の書き込みには匿名性があり、誰もが自分の名前・素性を隠したつもりで時には誹謗中傷につながる投稿をする。しかし、それは大きな認識の間違えである。なぜなら悪質な投稿には、情報開示をすることができるのである。今まで多くの時間と費用がかかることから多くの被害者が泣き寝入りしていたことも事実だ。被害者はプロバイダ責任制限法に基づき、SNSの管理者に発信者情報の開示を求めることができる。ただ、総務省の担当者によると「多くの場合は裁判で争うことになり、被害者にとって利用しにくい制度になっている」という。その一方で、少しずつ世の中が良い方向に動き出している。総務省は4月に研究会を設置し、インターネット上で他人を誹謗中傷する書き込みをした発信者を特定するため、管理者に情報開示を求める手続きの簡略化を議論し始めているそうだ。

 

私はゼミ活動で、サイバー防犯ボランティア研究会に所属している。

小中学校に赴きネットやSNSの適切な使い方を指導している。活動で感じるのは、子供達は私たち以上にSNSやインターネットを巧みに使いこなしているということだ。そこで私たちの授業で意識しているのは「禁止ではなく、共存」ということ。授業内でSNSを使うなと指導するというよりは、このように使えばトラブルに巻き込まれないと具体的な事案を扱って指導している。もちろん大人による誹謗中傷も問題ですが、幼い子供たちがデジタル機器に触る年齢は年々低くなっている。社会の変化に合わせて教育もついていかなければ、問題を減らすことは不可能である。

日本には言論の自由があり、個人の発言に制限されるべきではない。しかし、自分の発言には必ず責任が伴う。ネット上の言論空間こそ、自分で情報の取捨選択ができなければならない。ルールやモラルをきちんと皆が守れば傷つく人は減らすことができる。一人一人の意識で、世界は少しずつより良くなってほしいと切に感じる。

【参考文献】

・朝日新聞 2020年6月28日 朝刊・社説

ネット上の中傷 事業者の社会的責任は

https://www.asahi.com/articles/DA3S14529245.html

・ネット上の誹謗中傷、発信者特定を容易に

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2005/26/news103.html