徹底検証 小池都政4年間

崖から飛び降りる覚悟で、挑戦をしたい

小池都知事が16年都知事選への出馬を表明してから、はや4年。久しぶりに選挙が近づいています。最近はコロナ関係ばかりが報道され、それ以前の出来事が遠く昔のように感じられます。ただ、本来、都政はコロナ対応だけではなかったはずです。過去4年間を振り返ってみます。

前回の選挙は、舛添要一氏が政治資金問題を理由に辞職したことがきっかけで実施されました。元岩手県知事の増田寛也氏や、ジャーナリストの鳥越俊太郎氏を始め、歴代最多となる21人が立候補しました。小池氏は自民党の推薦を受けないまま立候補したことで、大きな波紋を呼びました。

公約には「東京大改革」を掲げ、待機児童ゼロ、介護離職ゼロ、満員電車ゼロなど7つのゼロを目指すと発表しました。そして、都議会で権力を握る自民党都連と“都議会のドン”を批判することで支持を集め、勝利を収めました。腐敗した都政に新たな風を吹き込んでくれるのではないか、と都民は期待したのです。

知事就任後、最初に直面したのは築地市場の移転問題です。豊洲新市場の土壌汚染対策に不安が残るとして、開場の延期を決定しました。最終的に、地下水管理システムや換気機能追加の工事を経て、移転は実施されました。しかし、予定が狂って移転が2年遅れたので、市場関係者に混乱が生じたことは否めません。

17年には都議選がありました。選挙戦では「傲りたかぶった自民党都連」VS「都政の旧態を打破する小池新党」という対立構造を描くことに成功しました。都民ファーストの会は圧勝して、議会を席巻しました。

さらに、小池氏は希望の党を立ち上げましたが、ここで支持率は急落しました。民進党の一部議員を「排除いたします」と発言したことをきっかけに、衆院選で惨敗したのです。「希望への道しるべ 12のゼロ」と称した公約は現実性を欠きました。ポピュリズム的な票稼ぎの手法は限界に直面することになりました。

その後は党代表の座を退き、足元の都政に専念するようになりました。特に注力したのは東京五輪の準備です。開催費用や混雑緩和、暑さ対策などの問題では、非現実的な案を挙げて論議を呼ぶことがありました。マラソンと競歩の開催地変更などのトラブルもありました。それでも、政府やIOC、JOCと協力しつつ、着実に準備を進めました。

今年はコロナ対策での活躍が目立っています。ロックダウンやステイホーム週間、ウィズ コロナ宣言、3密などのカタカナ言葉と新語を駆使して、危機を訴える姿は多く取り上げられました。緊急時の対応力が評価され、支持率は上昇しています。

このように、最近こそ株を上げているものの、小池都政は決して安定していませんでした。自民党都連による独裁政治を打破すると謳いながら、「排除いたします」発言で高姿勢に出てしまったことは慢心の現れでした。都政を蔑ろにして国政に手を伸ばそうとした戦略も失敗でした。

政策実行の点でも、公約をほとんど実現できていません。7つの項目のうち、完全に実現できたのは「ペットの殺処分ゼロ」のみです。型破りなアイデアを検討すること自体は良いとは思いますが、具体的な取り組みが不足しています。

一方で、都議会の問題や東京五輪の騒動、コロナ禍など、ひとたび嵐が起きれば、都民や国民を煽り立てる演説力は抜群でした。カタカナ言葉や新語の乱用に賛否はあれど、巧みな話術を駆使して、有権者を惹きつける能力には長けています。

今年の都知事選の最大の争点はコロナ対策と東京五輪となるでしょう。しかし、それだけが都政ではありません。4年間を検証しつつ、東京の今後の成長の姿を描き、現実的な政策論争が繰り広げられる。そんな選挙戦を期待したいものです。

 

参考記事:

1日付 日本経済新聞朝刊(大阪12版)27面「時流地流 コロナと東京都知事選」