図書館の再開よりも、サービスの拡充を。

大学4年のメインイベントは、卒業論文だと思います。1年間かけて、どんな研究をしようか、気合を入れて考えていましたが、出鼻をくじかれました。緊急事態宣言によって、大学の図書館も、公共図書館も閉まり、調べられる資料が限られたからです。図書館検索アプリ「カリール」の調査では、東京都の休館率は100%だそうです。最近は、自宅のパソコンから大学が提供するデータベースに入り、下調べを行っています。調べられるのは、新聞の過去記事と、ウェブに公開されている数少ない論文くらい。インターネットで資料を購入しようとも思いましたが、高額なうえ本当に必要なのか内容を見ることができないため、躊躇しています。

コロナで長期的に図書館が利用できないことで、多くの人が、不自由を感じているのではないでしょうか。調べものをする学びの場であり、誰もが気楽に立ち寄れる憩いの場でもあります。その存在意義を再認識させられる日々です。私は大学で図書館学を専攻しています。オンライン授業が始まり、コロナ禍での図書館のサービスについて調べたり、考えたりしています。

4日の会見で首相は、緊急事態宣言は5月末まで延長するものの、美術館や図書館などの再開を容認すると発表しました。ですが、私はクラスターの温床にならないか、心配しています。受験期に毎日のように訪れ、勉強していましたが、私と同じように朝から晩まで利用している高齢者が多いなと感じていたからです。正直、緊急事態宣言中は、閉めるべきだと思います。再開の判断はもっと慎重にしてほしいです。

休館は人々の知る権利や学ぶ権利を奪うことになりかねません。

休館を勧めるのは、この期間に新しい形態でサービスを継続する取り組みが広がっているからです。今すぐに再開しなくても、新しいサービスを充実させればいいと考えています。

新しいサービスとは何か。二つ紹介します。
ひとつは、ウェブでのサービスです。例えば、横浜市立図書館では、「お家で楽しめるコンテンツ」として、横浜に伝わる昔話や民話などの紙芝居が動画配信されていました。また、八王子市図書館では2年前から導入されている電子書籍に加え、5月10日まで期間限定で、英語の参考書や旅行雑誌も閲覧できるようになっていました。

もうひとつは、宅配サービスです。長野県立長野図書館は、宅配による本の貸し出しを始めたそうです。ホームページの蔵書検索で本を探し、ウェブや電話、ファックスなどで予約してもらいます。送料は利用者負担ですが、貸出期間を4週間に延ばしたそうです。これ以外にも、私が履修している図書館学の授業では、国立国会図書館にあるデジタル化された資料を公開すべきではないかという意見もでました。

県立長野図書館のホームページ。宅配だけでなく、調べもの支援もウェブ、メール、電話で行う。8日、筆者がスクリーンショットしたもの。

 

もちろん、全ての図書館がこのような新しいサービスを提供しているわけではありません。私の住む東京都武蔵野市でも新たな取り組みは見られません。中には、新しいサービスどころか、休館していること知らせるためにと、ホームページを閉じているところもあるそうです。

今後コロナウイルスの第二波、第三波のことを考えると、電子書籍などの新しいサービスを充実させたり、宅配サービスなどの体制を整えたりすることが必要だと思います。今からでも遅くないのではないでしょうか。パンデミックを機に、サービスが拡充されたらいいなと思います。図書館学を専攻している者として、今後もウォッチし続けます。

参考記事:8日付日本経済新聞朝刊(12版)31面(社会)「図書館の休館 学生ら9割研究に影響 サービス拡充臨む声多く」