「コロナ」ピンチをチャンスに

新型コロナウイルスの感染が広がる中、医療関係者とその家族への差別が目立っています。「ウイルスを持ち込むな」とタクシーに乗車を断られたり、保育園の登園を拒否されたり・・・ウイルスが蔓延するなか体を張って働き、いちばん危険な現場で多くの命を守ってくれている医療従事者に対する差別は、言語道断です。絶対に見過ごされてはいけないと思います。

そんな怒りを覚える中、先日ある新聞記事が目に留まりました。3月にコロナウイルスに感染し現在は回復したトム・ハンクスさんが、「コロナウイルス」と呼ばれていじめられたオーストラリアのコロナという名前の少年に、励ましの手紙とタイプライターを送ったというニュースです。この記事を読んで少し希望を感じました。地球規模で不安が増幅され、差別や偏見に形を変えてしまう今の世の中で、こうして「コロナ」を通じて本来なら関わることのなかった人同士が、国境や世代という壁を超えて繋がる可能性が垣間見えたからです。

ハンクスさんからのタイプライターを製作したのは、アメリカのスミス・コロナという会社だそうです。コロナ君が自分の名前が入ったタイプライターでハンクスさんに返信の手紙を書く姿を想像すると、なんだかほっこりします。

新型ウイルスと偶然にも同じ名前の「コロナ」は、他にもあります。メキシコの「コロナビール」はその名前が敬遠され購入する人が減るのではないかと懸念されていましたが、むしろ例年より売り上げが上昇したそうです。まさに、この逆境を少しでも前向きに捉え、チャンスに変えた一例だと思います。

最近は新聞を開いてもテレビをつけても、コロナ関連ばかり。感染者数の増減に一喜一憂し、どうしても暗い気持ちになってしまうのは私だけではないと思います。また目に見えないウイルスだからこそ、不安や怒りの矛先がどんどん間違った方向へ向かってしまう世の中にならないか心配です。

このピンチを、しっかりと距離を保ちながらも世界中の人が繋がるチャンスに変えられないか。そんな前向きな姿勢を、8歳のコロナ君から学んだ気がしました。

参考記事:25日付 朝日新聞朝刊 9面(国際)「コロナ君、元気出して トム・ハンクスさんからタイプライター」