オンライン授業で補えないもの

先月下旬、『日本の大学 問われる危機管理能力』を投稿しました。そこでコロナ感染症の拡大に対する大学の反応を検証したところ、対策が遅れている現状が浮かび上がりました。あれから10日。状況は急速に悪化し、大学も新たな対応策を次々と発表しています。

当初、大半は4月20日前後から新学期を開始するとしていましたが、5月のGW明けに再延期。授業のオンライン化も続々と決定しています。ようやく積極的な変化が現れ始めたことに安堵を覚えました。一方、4月を迎えてオンライン授業だけでは補うことのできない問題が浮き彫りになってきています。

深刻な影響を受けているのは新入生です。新天地で頑張ろうとした矢先に、出鼻を挫かれています。私の住むアパートに入居した1年生たちに話を聞いたところ、いくつものトラブルを抱えていることが分かりました。

最大の問題は、友達が作れないということです。大学は学問と研究に励む場であるだけでなく、人と出会う場所でもあります。楽しみや喜びを共有できる仲間を見つけ、尊敬できる先輩に支えられ、精神的に大人へと成熟していく。そのことも大学に入る意義の一つです。大切な機会が失われています。特に、実家を離れ、遠い新しい土地で一人暮らしを始めた学生は、人と話すことが出来ず、家に引きこもるしかありません。やることも殆どなく、虚無感と孤独感に苛まれているようです。

大変な受験勉強を乗り越えたにも関わらず、春休みに遊ぶことが出来ず、4月に入っても大学に通えず孤独を強いられ、本当に可哀想です。

アルバイトが出来ないことも切実な課題です。高校と異なり、学費や下宿代を自分で稼がなければならない人が増えます。年間100万円を超す出費を4月初頭からバイトして賄おうとしていたものの、働き口が見つからないというのです。

主要な勤め先であった飲食店は、外食する人が激減し、売上げは減少しています。そのため、新規の求人を抑えています。家庭教師は濃厚接触のリスクが高いため、需要が大幅減。学習塾も授業のオンライン化により、新しい講師は現時点で不要としているところがあります。働き口がないのに4月初頭から出費がかさみ、先行きを心配する声が上がります。

もう一つの問題は履修登録です。本来、授業科目を自由に選択することができるはずですが、実際は様々な決まりごとがあります。例えば、私の大学の1年生が受講する授業には14の区分があります。「一般教養」と言っても、単に合計数をクリアすれば良い訳ではなく、各区分で最低基準を満たすように選択する必要があります。

履修登録用のホームページの分かりづらさも相まって、複雑なシステムを理解しきれていない新入生が多くいるのです。相談できる先輩や情報を共有する同級生はいません。定員を超過した場合に抽選になるという制度も、不安に陥らせる要因の一つとなっています。

大学は分かりづらい文書を連発していますが、Youtubeの動画を通じて履修登録方法を説明した方がはるかに良いと思います。履修関係の質問を専門に受け付けるコールセンター、お悩み相談・質問アプリを設置することも検討して欲しいです。もちろん、私たち上級生も、SNSでの情報発信やオンライン交流会の実施を通じて、なるべく1年生に情報が届くよう全力で協力していきます。

新入生の皆さん、諦めないで下さい。必ず助けます!

 

参考記事:

朝日新聞、読売新聞 新型コロナウイルス感染症 関連記事