欧州や米国では新型コロナウイルスの影響により人々の自由を制限する動きが出始めています。店や娯楽施設が封鎖されているドイツのメルケル首相は18日、
「民主主義社会ではこうした制限は決して軽々しく発動されてはならない。だが今は、多くの命を救うために欠かせない」
とテレビを通じて呼びかけました。各国が強制的に国民の動きを制限し、感染拡大の防止に努めている中で、日本は「緊急事態宣言」も発令されていません。それに対しよく耳にする言葉は「要請」です。
「要請」は「必要だとして、強く願い求めること」を指します。一方で、強制力を持ち合わせていません。国内での感染者はついに1000人を超えました。他国に比べてまだ少ないとはいえ、検査されている数も少ないのです。海外から伝えられる大都市の閑散とした光景を見るたびに、日本は曖昧な言葉で呼びかけるのみでいいのかと思わざるを得ませんでした。
昨日、さいたまスーパーアリーナでは6500人ほどが集まる格闘技イベントが開かれています。会場を所有する埼玉県は事前に自粛要請をしていました。そのため、もしクラスターが発生した場合は主催者が責任を問われ、社会的な批判を浴びる可能性があるのです。イベントを主催する団体などは、いずれもコロナ問題で大きな打撃を受けています。何とかして開催したいという思いがあったのは分からないでもありませんが、大規模感染が起きた時のことを考えなかったのか疑問に感じています。
「要請」することで動く組織はもちろんありますし、人々の意識も少なからず変わるでしょう。ですが、その先の強い言葉がないから、海外と比較して「まだ日本は大丈夫」と思う人も出てきてしまうと思うのです。国や自治体の長が発する「要請」という言葉の裏には、何かあっても、それは当人の自己責任という突き放した考えが潜んでいるように聞こえます。じわじわと感染者が増え続ける今、トップに立つ人ならもっと思い切った言葉で伝えるべきです。
今日付:読売新聞朝刊 13S版 29面 (社会)「K-1自粛要請の中開催」
朝日新聞朝刊 14版 4面 (国際)「世界の街、静寂 欧州、消えた人影 「自由」制限、抵抗も 新型コロナ」
31面 (社会)「来場6500人、K-1開催 「最大限対策」 会場所有、埼玉県は自粛要請」
【お知らせ】
私事ではございますが、今月末で学生スタッフを卒業させて頂くため、本日が最後の投稿となります。この活動でニュースに関心を持ち、考えるきっかけを頂きました。また、自分が思うことを言葉で伝える難しさを学ぶことができました。2年間お付き合いくださった皆様、本当にありがとうございました。今後ともあらたにすをよろしくお願いいたします。