「いなごの災い」現実に 

いなごは地のあらゆる草、雹の害を免れた木の実をすべて食い尽くしたので、木であれ、野の草であれ、エジプト全土のどこにも緑のものは何一つ残らなかった。

旧約聖書「出エジプト記」にある1節です。はるか昔に描かれた「いなごの災い」。現在、東アフリカを中心に深刻な問題になっているようです。

カマキリに比べると、凶暴なイメージから縁遠いバッタ。小さい頃は、公園で捕まえて遊んでいたものです。その小さな虫たちが、農作物を食いつぶしていると記事で見てもあまり危機感を覚えることは出来ませんでした。

しかし、調べてみると「蝗害」の恐ろしさにぞっとしてしまいました。バッタといっても、私たちが真っ先に思い浮かべる緑色の細いものではなく、トノサマバッタのような見た目の「サバクトビバッタ」が深刻な被害をもたらしていました。記事に掲載された写真には、農作物の上を飛ぶおびただしい数のバッタが。聖書には

いなごが地の面をすべて覆ったので、地は暗くなった。

との描写もありますが、現実になりつつあると言っても過言ではありません。

では、なぜ農作物に甚大な被害が及ぶまでに大量発生してしまったのでしょうか。通常、バッタは、群れではなく単独行動を好みます。半砂漠地帯に住むサバクトビバッタも例外ではありません。雨季になると、エサを求めて草が生えた地域に移動し、産卵をしますが、雨は数日しか降らず、草が枯れてしまうため、また別の場所に旅に出ます。

しかし、多量の雨が降ると状況が変わります。草がなかなか枯れないので、1か所にとどまるようになるのです。バッタは繁殖能力が高いので、条件が良いと約3か月で20倍に増えるといいます。そうして群れで生活するようになると、体に変化が起きます。飛翔能力が非常に高まるのです。ときには、1日に150㎞移動することも。途中で群れが合流し、さらに大群となります。一度増えたが最後、どんどん強力な群れになっていくのです。

2018年アラビア半島に2つのサイクロンが襲来したことを皮切りに、増えているバッタ。国際連合食糧農業機関のホームページには、「Locust watch」というページもあり、サバクトビバッタの大群の居所、また農作物への被害状況を随時更新。それだけ深刻な状況になっています。

新型コロナウイルスが連日報じられている昨今ですが、環境問題も深刻です。抱える問題の多さにうんざりしてしまいます。一方で、私たちには今まで積み上げてきた技術が、そして知恵があります。団結すれば、解決への道筋も見えてくるはずです。今こそ、足並みを揃えて危機に立ち向かうべきではないでしょうか。

参考記事:
20日付 朝日新聞朝刊(14版)15面(オピニオン)「月刊安心新聞+ バッタの大発生被害 根本は過度な自然改造」

参考資料:
ナショジオニュース「植物食べ尽くすバッタの大発生 東アフリカに迫る危機」
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO56382500U0A300C2000000?channel=DF130120166020&style=1

子供の科学「バッタはどうして大量発生するの?」
https://www.kodomonokagaku.com/hatena/?88639b8ce18665241bc62c6949b6bd40

FAO「Locust watch」
http://www.fao.org/ag/locusts/en/info/info/index.html