国内外から1000万人超が訪れる見込みの東京五輪。予想される混雑による混乱を防ぐために欠かせない会場警備や交通警備の人員確保が急務となっている。
だが、有効求人倍率が高く、売り手市場の今日。低賃金、重労働というイメージの警備会社にはなかなか人が集まらない。昨年度の全国警備業協会が加盟500社を対象にした調査によると、約93%の会社が「人員不足」と答えたそうだ。
この深刻な人手不足に対して、政府も警備会社も決して手をこまねいているわけではない。
昨年、警備業法施行規則の改正により、警備未経験の新人が受講する「新任教育」時間が改正前の30時間以上から3分の2の20時間以上に短縮され、比較的早く業務に就くことが可能となった。つまり、警備員の量産が比較的に容易となったのである。
また、低賃金のイメージのある警備員であるが、その時給は上昇しており、平均時給を上回る場合が多い。求人情報大手のリクルートジョブズの調査によると、首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の昨年11月のアルバイト・パート募集時平均時給が1132円であるのに対して、「警備員・監視員・パーキングスタッフ」 は69円も高い1201円だった。しかも、この時給は前年同月よりも10.6%(115円)高いもので、警備員の時給が急激に上昇していることがわかる。
「新人教育」時間の短縮、時給の上昇からわかるように、東京五輪を目前に控えた今日、国も警備会社も猫の手も借りたいほど警備員確保に勤しんでいるのである。
それもそのはず、2012年のロンドン五輪では、警備員の確保に失敗し、政府が軍を動員し対応。前回のリオデジャネイロ五輪は、委託先の警備会社が破産し、警察OBを借り出すことになった。前回、前々回と同じ過ちを繰り返す訳にはいかない、との強い危機感が東京五輪にはある。
さて、「教育時間短縮」、「時給引き上げ」を武器に人員確保を試みる東京五輪だが、必要とされている警備員約1万4000人の確保を達成することはできるのか。
参考記事:
3日付 読売新聞夕刊(3版)10面「五輪警備員 まだ足りない」
警備保障タイムズ「警備員教育 大幅見直し」
http://kh-t.jp/close-up/c241.html
日経新聞
日本経済新聞「五輪バイト、高額で大量募集 時給押し上げの一因に」
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO53277310S9A211C1QM8000?s=5