同性婚をめぐる一連の訴訟で、福岡地裁は現在の法令は「違憲状態」との判断を示しました。
今月8日、福岡地方裁判所で「結婚の自由をすべての人に」を掲げる九州訴訟の判決が言い渡されました。同性婚を認めていない民法などの規定は憲法に違反しているとして、3組の同性カップルが国を訴えた裁判です。
5月30日には名古屋地裁で違憲が言い渡されており、福岡地裁での判決も注目されていました。昨年9月からこの裁判を傍聴し、4月の訴訟応援企画に参加した筆者は、この日を待ちわびていました。
■福岡地裁の判決
上田洋幸裁判長は「同性カップルに、婚姻による利益を一切認めず自ら選んだ相手と家族になる手段を与えていないのは、憲法24条2項に違反する状態」と述べ、「違憲状態」との判断を示しました。
憲法24条2項での争点は、婚姻や家族に関する法律について「個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない」という点の解釈です。判決は、この点において人格的利益の侵害は到底見過ごせないとしながらも、制度設計には様々な検討が必要で、立法府の裁量にゆだねられるとして、「違憲状態」と結論付けました。直ちに違憲とはしなかったわけです。
一方、法の下の平等を保障する同14条については、国が男女と子の養育を保護する目的は現在においても重要で、「同性カップルに婚姻を認めない区別には合理的な根拠がある」と判断。「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立」すると規定する同24条1項についても「両性」「夫婦」の文言を使っており、「同性婚を婚姻に含むと解釈するのは困難」として、同性婚を認めない現行規定が、これらの条項には違反していないとしました。
■5地裁の判決
「違憲」が札幌、名古屋の2件、「違憲状態」が東京、福岡の2件、これに対して「合憲」は大阪の1件にとどまりました。
24条1項について、どの地裁も「両性」は「男女」を差し、同性婚は想定していないと認定しながらも、「同性婚を禁止している」とは解釈しませんでした。合憲とした大阪地裁は「議論が尽くされていない」としながらも、「将来的に24条2項に違反する可能性」に言及しました。
■これから
提訴されたのは19年。世論調査において「同性婚を認めるべきだ」と答える割合が年々増加しているように、この4年間だけでも、LGBTQ+や同性婚に対する国民の考え方は変化しています。きっとこの変化は続いていくでしょう。
判決後の会見で、原告の一人ゆうたさんは「裁判に勝つという目的でやっているのではなく、国に早く動いて法律をつくってほしい、という最終的な目的で裁判を起こしている」と、こうぞうさんは「何年放置したら(同性婚が法制化される)その時が来るのだろうか」と語っていました。
後編では、当日福岡地裁で感じたこと、九州訴訟原告の一人こうぞうさんへのインタビューを記しています。
後編はこちらから↓
結婚の自由をすべての人に 2.九州訴訟「違憲状態」!【後編】 | あらたにす (allatanys.jp)
訴訟応援企画取材記事
結婚の自由をすべての人に 1.私たちの発信力は侮れない | あらたにす (allatanys.jp)
参考記事:
・2月20日付 朝日新聞デジタル 同性婚、法律で「認めるべきだ」72% 前回から増加 朝日世論調査:朝日新聞デジタル (asahi.com)
・8日付 読売新聞夕刊(4版)1面 「同性婚認めぬ規定『違憲状態』」
・9日付 朝日新聞朝刊(13版)2面(総合2) 「同性婚 踏み込む司法」
参考資料:
・【九州】違憲判決獲得(福岡地裁判決) | 結婚の自由をすべての人に – Marriage for All Japan –