「新幹線ができたら、移動時間が短くなるだろ?だからラクになると思ったが、そうじゃなかった。もう一つ仕事が入るだけだったよ」。バイト先のOBさんは、もとスポーツ部の新聞記者。新幹線について聞くと、いたずらっぽく笑いながらこんなことを話してくれました。
今日(3月26日(土))、北海道新幹線が開業しました。記念すべき1番列車は、上り下りともにすでに到着したようです。東京駅と新函館北斗駅は、最短4時間8分で結ばれます。新幹線の開通で注目されるのは、地域にもたらす経済効果です。新しい人の流れが生まれ、莫大なお金がその地域で動くことになります。ちょうど1年前、北陸新幹線が開通し、大きな話題を呼びました。日本政策投資銀行の試算によれば、その経済効果は、石川県では124億円、富山県では88億円にも上るとされていました。北海道新幹線もその例に漏れず、道南を中心に136億円の経済効果が見込まれています。
ただ、「経済効果」は「全部でこのくらいのお金が動くだろう」という試算に過ぎず、誰がどれだけ儲かるのか、もっと言えば地域が潤うのかどうかは、また別の話です。不安要素も数多く残っています。まず、未完成であるということです。地図を見ればわかるのですが、路線は北海道の南の端にしか到達していません。著名な観光地である函館へのアクセスは確かに良くなりましたが、札幌まではずいぶん距離があります。日経新聞の連載記事『迫真 北海道新幹線開業4』には、新幹線に対する複雑な思いがつづられていました。札幌で生活する人々は、まだ新幹線への関心は薄いようです。
安全対策も大きな課題です。JR北海道は慢性的な赤字で、貨物列車の脱線事故、レールの検査の不行き届きなど、暗いニュースが相次ぎます。北海道の厳しい気候から新幹線を守りきれるのか、心配になるのは無理もありません。
さて、記事を読んでいて、「4時間の壁」という言葉を初めて目にしました。航空機より新幹線を選ぶ目安は、4時間未満であることだと言われているようです。前述のOBさんが懐かしむことには、「昔は出張先で泊まらなくちゃいけなかったから、ご飯食べて、少し観光する時間があった」。地域でお金を落としてくれるなら、そんな壁、無理に挑戦しなくてもいいじゃない。これは時間の有り余っている、学生ならではの軽薄な考えかもしれません。どうか聞き流してください。
<参考記事>
3月26日付 日本経済新聞朝刊2面 関連記事