マイナンバー障害  制度完成の気概を見せよ

ここ数日は寒の戻りということで、冬にような日が続いていましたが、桜の花があちこちで咲く景色に、春からの新生活を意識される方も多いのではないでしょうか。筆者もその一人です。今日は共に新生活の始める読者の皆様と最後までやり抜くことの重要性をマイナンバー行政を例に考えていきたいと思います。

マイナンバー制度の本格運用開始から約3ヵ月が経過しましたが、個人番号だけでなく個人情報も記されたカードであるマイナンバーカードの発行に遅れが出ています。制度を運営する「地方公共団体情報システム機構」のシステム障害が原因で、自治体現場では混乱も生じています。東京都江戸川区では、今回の障害で窓口の端末の画面が停止するトラブルが頻発し、午後の対応を休止せざるを得ず、123人に窓口での対応を行うことができませんでした。1人当たり30分もの時間を要するということもあってか、1日当たりの配布数は予想の900枚の半数以下の300から400枚程度に落ち込んでいます。

大阪市では3月中旬時点で申請者の3%にしか交付できておらず、福岡市も10万の申請に対し、交付できたのは、1割強程度です。札幌市に至ってはシステム障害の起きにくい時間を狙って、休日出勤で対応する有様。システム障害は国民への普及が進まないだけでなく、職員の労働環境にも混乱も生じさせています。「機構が作ったシステムの不備のしわ寄せが自治体にきている。一刻も早く改善してほしい。」 江戸川区区民課の課長の声は切実な現場の叫び声のように感じずにはいられません。

ただその一方で、マイナンバーに近い制度を見事に運営する国が掲載されていました。バルト三国の一つ、エストニアです。この国では、国民番号制度が施行され、IDカードで税の申告や会社の登録だけでなく、処方箋の登録、インターネットバンキングや投票、一部の商店ではポイントカードとして利用できるなど、電子政府を目指した国づくりが進められています。書面でのやり取りが減り、労働時間を短縮することで、GDP2%分が他の仕事に回せるようになるという試算も掲載されていました。個人情報管理にも優れており、データベースを分散することで、個人情報などの大きな被害の経験もありません。14年12月以降は国外に暮らす外国人にもサービスを広げ、2日以内で起業が可能です。今後は企業誘致にも活用を目指しています。

効率化を進めるエストニアと逆に仕事が絶賛大増量中の日本、何とも皮肉のような2つの記事ですね。勿論日本と状況が異なることは筆者も理解しています。GDPは日本の107分の1程度、人口も325万人、日本は東京だけで1335万人もの人がいます。ですが、そのような違いを考慮したとしても、うまくいっている国と現場が大混乱し、批判が殺到している日本との差は火を見るよりも明らかです。その理由は置かれた状況下で最大限制度を活用しようする姿勢ではないでしょうか。エストニア国内でも批判がありましたが、国全体のとして取り組みが功を奏し、今があるのでしょう。

日本では他の政策課題や閣僚の辞任問題や野党再編などが山積みで、マイナンバー関連の報道ばかりというわけにはいきませんでした。しかし、文句を言っていても何も変わりません。課題が山積みでも、やらなければいけないことはやらなければいけません。エストニアも当初は苦労したことでしょう。本当に必要だと思うのならば、政府や国会は現場に向けた対応含め、新制度が生きるよう、最後まで取り組みや担当者自らの主張を続けてほしいものです。何かを成し遂げるためには、それくらいの気概が必要なはずにも関わらず、どれもこれも政争に巻きこまれて中途半端なまま。問題の原因はこの姿勢にあるのではないでしょうか。新しいことを導入すれば必ず一度はトラブルが発生します。意識的にも設備的にもどこか驕りがあったのでしょう。全国単位で行う制度でそんなことがあっていい訳がありません。国全体として反省し、心を入れ替え、改めて最後までやり通す必要があります。批判も最後までやりきった上で、建設的に行いましょう。

最後に、筆者を含めた春から新生活を始める皆さん、マイナンバーのような難局にぶち当たっても、最後までやり抜こうという姿勢は何をやるにも絶対に必要な資質だと筆者は考えています。中途半端な気持ちでは、今のマイナンバーのようなことになってしまうことでしょう。最後までやり抜く気概を持ち、一緒に4月から頑張りましょう!

参考記事:27日付朝日新聞朝刊(東京14版)7面(経済面) 「税申告・投票・・・IDカード一枚」より
同日付読売新聞朝刊(同版)3面(総合面) 「滞る交付 自治体悲鳴」より

私事で大変恐縮ではございますが、本日の投稿をもちまして、あらたにすでの活動を卒業させていただくこととなりました。約2年ほど投稿を続けて参りましたが、読者の皆様から頂く厳しいご批判や温かいお言葉は私の貴重な財産として心に刻まれています。2年間、最後までお読みいただき本当にありがとうございました。また、私が成長できる環境を与えてくださった事務局、編集部のスタッフの皆様にもこの場をお借りして御礼申し上げます。皆様、今後ともあらたにすをどうぞよろしくお願い申し上げます。4月より新スタッフが加入致します。後輩たちの新たな投稿にご期待ください。

                                                    土屋涼介