現在「社会人のための教養」が話題となっています。京大や東大でも社会人のためのプログラムが設立され、リーダーシップから、茶道や華道まで、幅広い教養が学ぶことができます。
これは、「大学で学ぶ社会人の数を倍増する」という、政府の「日本再興戦略」の一環です。低成長が続く日本経済の底上げのためには、高度な人材教育が必要だと判断されたためです。
社会人になってからも大学で学び直すということは大変魅力的です。特に、ビジネスなどの専門知識ではなく、幅広い教養を学ぶことで、視野を広げられ、経営にも生かせる、と考えて参加する社会人もいるそうです。様々な分野で活躍する社会人と一つの教室で学ぶことで、人脈づくりにも期待ができるでしょう。
しかし、「本質を見極める力」、「学位はもらえない」、「費用3ヶ月250万円」などのキャッチフレーズが先行すると、関心を持ってはいても、遠のいてしまう社会人が多いのも事実です。国内の大学に入学する社会人の数がここ数年横ばいである理由として、カリキュラムの分かりにくさや、費用対効果が見えにくさが挙げられています。プログラム内容をもっと透明化することが、大学で学ぶ社会人の数の増加には不可欠でしょう。
ただ、これが政府の求めていることでしょうか。この「日本再興戦略」の目的は、そもそも大学の生徒数を増やすことではなく、あくまでも「日本経済の底上げ」です。また、記事で紹介されている京都大学と東京大学でのプログラムはどちらも、定員も20人ほどであり、このような小規模なプログラムはそもそも生徒数を増やすことを目的とはしていません。また、3ヶ月で250万円以上、という授業料からも、一般の企業の社会人が興味本位で入学することはほとんど難しいでしょう。政府の「日本再興戦略」、特に大学での「教養プログラム」は、選ばれた大企業の経営層の人材交流のような気がしてなりません。
もちろん、日本企業が世界の企業と戦うためには、国内での競争だけではなく、異業種の大企業が知恵を出し合い、協力する必要があります。そのような政府の戦略に反対するわけではありませんが、この魅力的な「教養プログラム」「社会人教育」は普通の社会人には手が出ないものな気がします。
参考にした記事
12月16日付 日本経済新聞朝刊(大学面)「社会人教育 教養を重視」