夫婦同姓、多数決の限界

10対5、よって夫婦同姓を定めた民法の規定は「合憲」─。判決は最高裁判所の裁判官15名による多数決で決まりました。しかし、女性裁判官3名はいずれも「違憲」と判断。「別性を認めないことに合理性はない」と、多数意見に反論しました。他方、女性の再婚禁止期間を半年と定めた同法の規定には、15名全員が「違憲」としました。「100日でこと足りる。それ以上は過剰な制約」だと結論付けました。

夫婦同姓に関して、最高裁はこうも言います。

この種の制度のあり方は国会で論じ、判断するものだ。

つまり、国民が選んだ代表が議論し、改正していくべきだということです。1996年、法制審議会は「選択的夫婦別姓制度」を提案しましたが、立ち消えになったという経緯があります。夫婦同姓に関する議論は国会でなされることなく、その前段階で話は霧消してしまったのです。それを考えると、最高裁の言う「国会で議論を」という言い分も理解できます。

しかし、約20年前に法制審が投げた一石を葬ったのも保守系議員の圧力、つまり多数決ではないでしょうか。多数が導いた正解は時代とともに変遷し、不正解にもなりうる。そのことを夫婦同姓の議論は私たちに示しているように感じます。

加えて、今回の裁判は男女の立場によって見解が割れます。現に、先述したように女性裁判官3名は「違憲」が妥当としました。憲法が定める「男女の平等」を問う裁判なのに、最高裁がその原則を無視しているのでは…。多数決の限界を司法、国会、ともに感じます。

 

参考記事:17日付 各紙「夫婦同姓規定裁判」関連面