『刑務所を他国にレンタル』。見出しに驚かされました。厳重に管理された刑務所だとしても、他国の犯罪者が服役のために送り込まれるといわれると少し不安に思ってしまいます。
オランダ政府は、先月から自国の刑務所にノルウェーの受刑者を受け入れ始めました。国内の受刑者が減って空きが増えたからだそうです。以前からベルギーの受刑者も受け入れており、今後もさらに受け入れの拡大を図るそうです。でも、言葉が通じないことに加え、家族との距離が遠くなり面会時間が減ったことで精神的なダメージを与える問題もあるようです。
刑務所のレンタルよりも、さらに驚いたことがあります。所内の様子が、日本のイメージとかなり違っていたことです。
ー日光が差し込む明るい所内は、廊下に卓球台やビリヤード台が置かれ、金魚が泳ぐ水槽もある。ガラス張りの喫煙室では受刑者が談笑しながら紫煙をくゆらせていた
ーほとんどが個室でトイレや洗面所のほか、テレビや冷蔵庫も完備。所内のスーパーで肉や野菜を買い、調理場で料理も作れる
ーある部屋では、壁には彼女の写真が貼られ、レゲエの音楽が流れていた
読売新聞には、ビジネスホテルと見間違えるほどの清潔さで快適そうな室内の写真と共に、このような生活事情が書かれていました。もちろん部屋には扉がついており、プライバシーも適度な自由も保障されているような印象をうけました。
さて、刑務所は犯した罪を反省し更生させる場であると同時に、再犯を防ぐための役割も担っています。しかし、法務省の「犯罪白書」で日本の再犯率は40~50パーセントにも及ぶと知ると、日本の刑務所内のシステムに問題があると疑わずにはいられません。刑務所はどのようなあり方が望ましいのでしょうか。日本のように、時間、会話、娯楽、食事、風呂などあらゆる自由が制限され、鉄格子に囲われた部屋でプライバシーもない生活を送らせることが、更生と再犯防止につながるのか疑問が残ります。
オランダ刑務所の看守長は、「24時間自由を奪われただけで十分な罰だ。社会の安全を守るには社会復帰後に二度と犯罪を起こさせないことが重要だ」と述べています。常識を覆すオランダの刑務所の在り方が再犯防止にどれだけつながっているのか。それを日本に活用できないのか。知りたいこと、考えるべきことは少なくありません。
10月17日付 読売新聞朝刊(大阪13版)6面(国際面) 世界in depth 「オランダ刑務所 他国にレンタル」