安保法案採決 国会議事堂前にて

 昨晩、国会議事堂前に行ってきました。駅を出てすぐに、大勢の警察官が交通整理をしている姿が目に入ります。低い太鼓の音が響き、リズムに乗せてスローガンを叫ぶ。誰からともなく渡されたプラカードには「強行採決絶対反対!」の文字が躍ります。昨晩の国会前は、まさに緊迫していました。

 本日未明に、参院本会議で安全保証関連法案が賛成多数で可決されました。これからは集団的自衛権の行使が可能となり、戦後日本の安全保障の大きな転換点となります。
 
 今回のデモは安倍首相の政策への反論ではなく、必死の抵抗であるかのように感じました。「やめろ」「反対」の声ばかりで、どうするのが良いのかという主張は見えてきません。政府は無用な緊張を避けるため、特定の国を仮想敵国としているとは口が裂けても言えず、ホルムズ海峡のような曖昧な説明に終始する。かといって「明確にどうなるのか」というビジョンを誰も示せないので、憲法学者以外は理論的な裏付けを得られない。そのため見えない何かに怯え、嫌々尽くしの主張になってしまうのではないか。デモの寄る辺のなさがうかがえます。

 しかしながら、実際に現場に立ち会ったことで大きく印象が変わったのも事実です。私たちはテレビのニュースを見ただけで、全てが分かった気になってしまいがちです。私自身を含め、周囲はデモに対して概ね冷ややかでした。「建設的な主張をしていない」「大学4年生にもなって何をしているんだろう」という声が聞かれます。
 
 昨晩、初めてSEALDsの演説を現場で聴きました。「仮想敵国も自衛隊の人も、誰も傷つかない平和な世界を目指す」。「犠牲の上の幸福は嫌だ」。後で文字に起こしてみて、あまりの具体性のなさに驚きます。しかし国会議事堂前で聞いた言葉は、熱のこもった、確かな思いから発せられた言葉でした。少なくともあの場にいた人々の心を確かに動かしたのだと思います。この感覚は、テレビの前では得られないものでした。
 
 すでに違憲訴訟の準備が進んでいることからも、日本において安全保障問題はまだまだ議論の中心であり続けることでしょう。その主張はどうあれ、一度自分の足を使ってみることをおすすめします。実際にその場に立ちいて、見て観て聴くことによって、やっと思いを受け止めることができる。それに気づけたのが昨晩の最大の収穫でした。私もこれからはフットワークを軽くし、発信者たちの言葉に耳を傾けていきたいと思います。

9月19日(土) 読売新聞朝刊13版 1面『安保法案 採決へ』

9月18日(金) 朝日新聞朝刊14版 1面『安保採決 参院委も強行』

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