書くことが遺産になる あなたは筆を持ったことがありますか

あなたは筆を持ったことがありますか。どんな場で文字を書くことが多いですか。

 

昨日、無形文化遺産の事前審査をしていたユネスコの評価機関が書道の登録を勧告したと文化庁が発表しました。正式な登録は今後の政府間会議において行われます。

書道は中国で生まれた文字の表現方法です。漢字と共に日本に伝わりました。それが平安時代の国風文化に揉まれ、現在のひらがなへと繋がる仮名文字が誕生しました。書道は日本の文字文化の中心ともいえます。

 

学校教育における書道

無形文化遺産となる「書道」には、芸術としての書道だけでなく、日常生活における筆の手書き文化も含まれています。では実際、どれほどの人が日常的に親しんでいるのでしょうか。

 

多くの人が経験する機会として、学校教育の書道が挙げられます。文部科学省では小学校、中学校では国語科のなかで書写指導が行われています。ここでは、実用性を重視しており、日常生活に役立つ、文字を書く力を身に付けることが目的となっています。書道芸術を学ぶうえでも、基礎になる学びです。

その後、高校では芸術の選択科目として書道が位置付けられることが多くなります。それまでに学んだことを基礎に創造性や芸術性を育んでいくことが重視されています。

しかし、筆者には中学校で書道の授業を受けた記憶はほとんどありません。実際どれほどの学校が書道の授業を行っているのかは明らかでないようです。6日付の読売新聞朝刊は書道を教えられる教員の減少を指摘しており、学校教育の中で教え続けるには書道を経験し、正しく指導できる教員が必要であるとされます。

 

学校のほかにも書道を学ぶ機会はあります。令和2年の文化庁の調査では、習字教室のや家庭の習慣、イベントでの経験などでも多くの人が経験したことがあると述べられています。つまり、学校教育だけではなく、書道は多くの機会に体験していることが分かります。

実際、筆者は2歳のころから筆を持っています。学校教育だけではなく、物心がつく前から書道教室に通い、結果的に今でも続けています。ただ、小学生の頃は多くの同年代がいたのに対し、成長するごとに人数は減っていきます。大学生になっても習い事を続ける難しさを実感しています。

「五国の魅力」学生交流書道展に、筆者が高校一年生の時に出品した作品(2022年2月筆者撮影)

 

日常に溶け込んだ書道

書道の日常経験として、書き初めや手紙、祝儀や不祝儀での金封への文字入れなどの経験も無形文化遺産には含まれます。

なかでも書き初めは学校での経験が多いです。新年の登校初日に書道の道具を持って学校へ行き、みんなで書いて提出した記憶は多くの方にあるのではないでしょうか。その他にも、毎年多くの神社で書き初めの催しが開かれています。特に菅原道真公が御祭神となっている天満宮では学問の神様への信仰とも結びつき、多くの神社で実施されています。

兵庫県加古川市で開催される読売書初め大会に、筆者が小学3年生の時に出品した作品(2015年1月筆者撮影)

対して、手紙や金封への筆での文字入れの機会は減っているのではないでしょうか。結婚式などのご祝儀袋や中元、歳暮では、シール印刷のほかWordでも簡単に名前などを印刷できます。これは年賀状の衰退にも当てはまるかもしれません。日常生活で筆ペンや小筆を出してくるのは面倒だ、と思う人も多いはずです。もしも服に墨が付いたらなかなか落ちない、ということから敬遠する声も。うまく書けないという印象が強く、苦手意識がある人も少なくないでしょう。

 

 

多くの新聞では書道が無形文化遺産になることを歓迎し、文化が保存・活用されて未来へと受け継がれていくことを期待する声が載せられています。

書道を日常的に学んでいる筆者も、多くの人が美術館や学校などで書道作品を目にし、そして手で書くことを大切にするきっかけになればと思います。

 

 

【参考資料】

2026年11月5日付 朝日新聞(大阪)夕刊1面 「書道 無形文化遺産へ」

2026年11月6日付 朝日新聞(大阪)朝刊1面 「書道 無形文化遺産へ」

2026年11月6日付 朝日新聞(大阪)朝刊24面 「書道 「心の糧」世界へ発信」

 

2026年11月6日付 読売新聞(大阪)朝刊1面 「書道 無形文化遺産へ」

2026年11月6日付 読売新聞(大阪)朝刊27面 「書の芸術性 世界へ」

 

文化庁地域文化相性本部事務局、「令和2年度 生活文化調査事業(書道)報告書」https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/seikatsubunka_chosa/pdf/93014801_05.pdf.

文部科学省、「学校教育における書写・書道教育について」https://www.nihonshodobunka.jp/media/20260617-120619-279.pdf.