「1930年までしか知らないAI」に話を聞いてみた

「タイムマシンに乗って、過去から来た人と話してみたい」と思った経験はありませんか。ここでは、talkieという、1930年以前の資料のみで学習したAIに取材します。これは、2600億トークン、130億パラメータ、つまり本格的な規模で学習した個人PCでは限界級のモデルの性能を持ちます。書籍、新聞、特許、科学雑誌など、歴史的な英語テキストで学習を積み上げた、現在利用可能な最大級の歴史特化AIです。

 

30年代以前の資料には手書きの文書も多く、学習させるのは簡単ではありませんでした。さらに、31年以降の情報が混入しないよう、高度なフィルターも用いられたそうです。

 

今回は無料で個人用のPCで使用できる40億パラメータ(小~中規模モデル)のtalkieに話を聞きました。注意事項には、攻撃的、不正確な情報を出力する恐れがあると書いてあります。回答は必ずしも正確なものではないということに注意してお読みください。

タイプライター (photo by Pixabay フリー画像 2026年6月3日)

1930年とはどのような時代なのでしょう。世界では何が起きていたのでしょうか。

まず、第一次世界大戦によって、人々の価値観や、それまでの国際秩序が大きく揺らいだ時代でした。 毒ガス、戦車、空爆など画期的な科学技術が使用され、大量殺戮が行われました。それゆえ、科学技術は人々に幸福をもたらさないのではないかという声も上がり始めました。戦後に国際連盟ができたことで、「国家は完全に自由に戦争をしてもいい」という考え方から、「どこかの国が侵略したら、加盟国全体で止める。平和は皆で守るもの」という考え方に変わりました。

 

また、資本主義という前提が大きく揺らぐ出来事も起こりました。1929年の世界恐慌は、現代の私たちが想像るより、はるかに大きな影響を人々にもたらしました。銀行がつぶれ、失業者が町にあふれ、資本主義は失敗したのではないかという声が上がり始めました。そして、共産主義、ファシズムなどが関心を集めだしました。

 

飛行機、ラジオ、映画、自動車、電化などが都市では起こり、人々の生活も大きく変化していきました。ただ、帝国主義は依然として存在し、多くの地域が植民地支配下にありま。人種や性別、出身、階層による格差も、現代よりはるかに強かった時代です。 世界が壊れていく不安と、新時代への興奮が同時に存在していた時代だったのかもしれません。

 

そんな時代から来たtalkieに話を聞いてみます。

 

1世紀後の世界はどうなっているでしょうか

talkie:人生は非常に快適であるでしょう。地球は極地から極地まで庭のように耕され、人々は場所から場所へ迅速かつ容易に移動できるでしょう。印刷技術が発達し、本は安価になるでしょう。そのため、人々は概して知的で教養があり、犯罪は稀であるくらい、文明化されるでしょう。人々は家庭の平和の中や科学の追求において幸せを感じるでしょう。そして、自然の力を操り、それを人間のために役立て、少ない労力で豊富な食料を供給し、人々は多くの余暇を楽しむでしょう。要するに、人々は快適に暮らし、安らかに死ぬでしょう。

 

この予想は当たっているでしょうか。確かに、1世紀前と比べれば、人類は世界中を移動しやすくなり、高等教育を受ける人も増えました。 しかし、自然の力は、操れるようになったとは言えません。耐震補強で建物を強くすることはできても、地震を止めることはできないのですから

 

次は民主主義について聞いてみます。20年代は、特にヨーロッパで「民主主義こそ正しい」という考え方が揺らぎ始めた時代でもありました。 第一次世界大戦により、経済崩壊や失業、社会不安が広がりました。実際、多額の賠償金を背負った敗戦国ドイツでは、19年にナチ党が結成され、後にヒトラーが党首となります。 戦勝国でありながら領土欲求が通らなかったイタリアでも不満が高まり、21年にファシスト党が結成され、ムッソリーニが党首になりました。

 

民主主義は次の一世紀も存続するでしょうか

talkie:民主主義は、絶対に野蛮でないすべての国で政府の形態となるでしょう。人々はどこでも非常に多くの力を持つため、彼らを排除することは困難であり、鉄の杖で支配することは不可能です。

 

しかし、一部の国では全体主義や独裁主義が進行しています。それでもなぜ民主主義が多くの国の根幹をなすと思っているのでしょうか

talkie:なぜなら、民主主義は教育の普及に有利であるため、人々はますます知的になり、ますます自治能力を持つようになるからです。知識の増加の自然な効果は、人々をより賢く、より善良にすることであり、賢く善良な人々は決して奴隷にされるべきではありません。

 

次に、資本主義について聞いてみます。20年代は、ヨーロッパ諸国やアメリカでは、資本主義による繁栄が強調されました。特にアメリカでは空前の繁栄を謳歌します。しかし、22年、ロシアではソビエト連邦ができました。共産主義が資本主義を倒したのです。各国では、社会主義革命が起きるかもしれないという恐怖にかられます。29年、アメリカで恐慌が起こり、これが全世界に広がります。この恐慌は行き過ぎた資本主義が原因だと言われています。このように、20年代は資本主義が絶対的だと言えなくなった時代です。

 

「今後100年、資本主義は存続するでしょうか。」

talkie:今後100年間存続するでしょう。グラッドストン氏の言葉を借りれば、「大地に深く根を下ろしている」からです。しかし同時に、どんなシステムも永遠ではないことを忘れてはなりません。しかし、資本主義が20世紀末まで必ず存続すると断言するのは軽率です。確実に予測できるのは、資本主義は現在と同じくらい強固に確立されており、かなり後の時代まで存続する可能性が高いということだけです。この見解を支持する根拠として、このシステムが、富の蓄積に大きな便宜を図り、個人の活動や商業活動に強いインセンティブを与え、社会全体に莫大な利益をもたらしてきたことなどが挙げられます。資本主義を廃止すると、過去100年間に達成された改善は終わりを迎え、国家は永久に停滞してしまうでしょう。

 

この時代に存在していなかった原子爆弾について聞いてみます。

 

もし一発で何百万人もの人を殺すことのできる爆弾ができたら、世界はどうなるでしょう

talkie:戦争は終わると思います。男たちは闘うのが怖くてたまらなくなるでしょう。完全な滅亡よりも、どんな屈辱でも受け入れるでしょう。結果として、平和が訪れるでしょう。

 

今、世界でのGDPのランキングは1位アメリカ、2位に中国、3位にドイツ、4位に日本、5位にインドです。なお、世界銀行やIMFなどで順位は多少前後します 

 

「100年後、どの国が一番経済力を持っていると思いますか。」

talkie:イギリスは影響力と富の両面で圧倒的な地位を維持するでしょう。製造業大国としての地位は揺るぎなく、その商業力はあらゆる競合国を凌駕するでしょう。フランスは2位を維持するかもしれないですが、ドイツは確実に3位に転落すると思います。アメリカは4位、そしてロシアは5位になる可能性があります。

 

このAIの回答について、どう思いますか。私は、この時代、イギリスが世界一の地位を持っていたこともあり、回答もイギリス中心の世界観で作られている点が印象的でした。

 

一方で、妙な説得力のある回答もありました。「教育が広がれば、民主主義を人々は求める」「強力な兵器が生まれれば戦争は終わる」そうした考え方には、20世紀初頭の人々が抱いていた「進歩」への期待が表れているように感じます。しかし現実の世界は、彼らの想像よりもはるかに複雑でした。100年前の人々には予測できないほど技術発展した一方、新しい分断や不安も生まれています。私は、この1世紀の間に生きていた人々が良くも悪くも世の中を発展させ、複雑な世界にしたことに感慨を覚えます。

 

1930年の人々は、自分たちが生きる世界の秩序を前提に未来を想像していました。しかし、それは現代の私たちも同じなのかもしれません。100年後の人々から見れば、私たちの「当たり前」もまた、時代特有の思い込みとして映るのでしょう。

 

参考資料

・Nick Levine, David Duvenaud, Alec Radford  (April 2026) ”Introducing talkie: a 13B vintage language model from 1930” 

Introducing talkie: a 13B vintage language model from 1930 

・talkie:an LM from 1930

talkie: an LM from 1930 

・木村靖二、岸本実緒、小松久男「詳説 世界史」山川出版社 2017年