支援の先に―余暇で繋がる福祉と地域

京都市の「社会福祉法人みやこ」を取材した(制度と現場変わりゆく就労支援)後、大学の講義でNIMBY(Not in My Back Yard)という言葉を知りました。社会にとって必要だと認めながらも、「自分の近くには来てほしくない」とする住民の態度を指す言葉です。福祉施設もLULU(Locally Unwanted Land Use)(近隣にとって望ましくない土地利用)として捉えられることがあります。

福祉施設はどうすれば地域に受け入れられるのでしょうか。現場で見えたのは、「支援」ではなく「余暇」を通じた関係づくりでした。

新入生交流会の様子(京都市中京区2026年4月19日 筆者撮影)

 

新入生交流会の様子

(京都市中京区2026419日 筆者撮影)

 

たんぽぽが作る余暇

「社会福祉法人みやこ」では、学生サークル「たんぽぽ」がボランティアとして月に1度、利用者に余暇の機会を提供しています。今月は京都市動物園を訪れ、新しいボランティアとの交流を図る企画が行われました。その準備は2月から始まり、利用者の特性に合わせて全員が楽しめる内容が計画されていました。

当日は、利用する駅の構内図や乗車位置、移動経路、注意点まで必要な情報がきめ細かく共有されていました。班は約8人で構成され、利用者とボランティアがペアになって行動します。班長は分単位の行程表を何度も確認しながら進行し、その綿密さは単なるイベント運営にとどまらず、余暇に参加する誰もが安心して過ごせる環境をつくるための配慮でもありました。

この活動の大部分は学生側に任されています。今回の参加者は、利用者14名に対してボランティア36名、職員は1名だけでした。職員は「何十年も余暇を支えてくれている信頼がある」と話す。

楽しいから始まる繋がり

印象的だったのは、ボランティアの参加動機でした。福祉への強い関心から参加している人ばかりではなく、「友達に誘われて楽しかったから」「新歓のご飯につられて」などなど、きっかけは日常的で気軽なものが多いようでした。それでも活動を続ける理由として多くが挙げたのは、「楽しいから」でした。

ある学生は、参加前は街中で見かける知的障害者に対して「怖い」「気持ち悪い」と感じていたそうです。しかし今は「どんな感情なのか、何に困っているのかを想像できるようになった」と話してくれました。他の学生も、「関わるうちに特性や感情が分かるようになった」と語り、ネガティブなイメージは薄れていったといいます。

利用者とボランティアの間では、一日を通して笑顔が絶えませんでした。ボランティアは企画を本気でつくり、利用者はそれを全力で楽しむ、その関係は「支援する」という一方向のものではなく、共に過ごす中で築かれていました。

利用者が住む、同法人運営のグループホームの前で

(京都市中京区2026419日 筆者撮影)

それでも残る距離

同法人では、地域住民も自由に参加できる「みやこふれあいまつり」も毎年開催しています。福祉施設について、どんな人がいるのか、何をしているのかなどを地域の人が知る貴重な機会になっています。活動に初めて参加した一年生は、「学生と利用者だけの交流では限界がある。こうした活動が広まれば見られ方も変わると思う」と話してくれました。

しかし、余暇を共にする中でも、周囲からの視線が気になったのは否定できません。好奇や戸惑いが入り混じった視線が示す距離の背景には、日常的な接点の少なさがあるのではないでしょうか。就労継続支援事業所が「迷惑施設」と見なされるのも、その延長線上にあると考えられます。

「たんぽぽ」では利用者を「仲間」と呼んでいます。ボランティアの学生は、「地域で一緒に暮らす仲間であり、友達でもあるから」と説明してくれました。その活動は、余暇として互いの時間を共有する中で、理解を少しずつ深めていくものです。知らないことで生まれる距離を埋めるためには、こうした日常的な関わりの積み重ねが必要でしょう。

参考文献

・2026年04月22日 朝日新聞朝刊 (大阪)3面「(不安の正体 多民社会)日本の現在地:下 訪日客に疲れ、投稿したら… SNS、排外主義のうねりに」

・2026年04月21日 朝日新聞朝刊 (大阪)3面「(不安の正体多民社会)日本の現在地:中 わからなさ、反発の火種に土葬・モスク…まず対話から」

・2026年04月20日 朝日新聞朝刊 (大阪)1面「(不安の正体 多民社会)日本の現在地:上 「新たな隣人」つなぐ一歩 増える外国人、地域住民は」

参考資料

・2024年8月5日付 朝日新聞 「NIMBYとは? 発生のメカニズムや解決方法を具体例とともに解説」

https://www.asahi.com/sdgs/article/15365606#inner_link_001

(最終閲覧2026年4月24日)