先日、東京で散歩を楽しみました。関西出身の筆者は行ったことのない場所をピックアップ。その中でも、どうしても行ってみたかった場所へ足を向けました。靖国神社です。
政治と靖国神社の関係はいつも大きなニュースになります。「靖国の例大祭、私費で玉串料 首相、参拝は見送り」(朝日新聞、10月20日朝刊4面)、「首相が靖国に玉串料を奉納 党総務会長通じ」(読売新聞、10月20日朝刊4面)。10月20日付の各紙には靖国神社の例大祭に合わせて多くの記事が掲載されました。
「なぜ参拝がニュースになるのか」
「靖国神社とは、他の神社と何が違うのか」
気になることを調べてみました。
靖国神社とは
まず、神社とは何でしょうか。神を祀る場所という印象が強いでしょう。しかし、「人」を祀っている場合もあります。筆者の通う立命館大学のそばにある北野天満宮は「人を祀る神社」としてよく知られています。ここの御祭神は菅原道真公です。
靖国神社も同様に、人を祀る神社です。明治維新期に起きた戊辰戦争では、近代国家建設のために尽力した多くの命を落としました。靖国神社はそうした人々の御霊を慰めるために明治天皇のもとで設けられた招魂社が起源となっています。その後も、「国のために命を落とした人」を祀る場となっています。
具体的には、明治維新期の先駆けである坂本龍馬、吉田松陰などの幕末の志士、日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、日中戦争(満州事変、支那事変)、第二次世界大戦などにおいて国家の防衛に命を落とした人たちが身分や性別を問わず祀られていることが特徴で、特定の誰か一人を中心に祀る形式ではありません。
祀られている人の氏名が全て公開されているわけではありませんが、全体で246万6千余柱とされています。神様の数では「柱」という単位が用いられることから、246万6千余の人の命が祀られている、と分かります。
他の神社と同様に祈りをささげる場である一方、多くの人々が祀られており、そこには歴史的背景が色濃く反映されているという点が他の神社とは異なると考えられるでしょう。
なぜ参拝がニュースになるのか
日本において、政治家がとる宗教的な行為はどうしてニュースになるのでしょうか。
靖国神社の参拝においては『どの立場で参拝をするのか』ということが重要です。問われるのは憲法20条によって規定されている政教分離との関係です。20条は国や機関が宗教教育や宗教活動をすることを禁じています。このため国の機関と位置づけられる内閣総理大臣や閣僚が「公人」として参拝することは憲法違反になります。
この問題をさらに複雑にしているのが、祀られている人の中に戦犯とされた人々が含まれていることです。戦争犯罪は極東国際軍事裁判や各地の軍事法廷で裁かれ、死刑を含む刑が執行されました。
その際に、戦犯は三つに分類されました。犯した罪に違いがあり、A級戦犯は戦時中の「平和に対する罪」(戦争を起こした国家や軍の指導者)、B級戦犯は「通例の戦争犯罪」(非人道的兵器の使用や捕虜・民間人の虐待・虐殺など)、C級戦犯は「人道に対する罪」(政治的、人種的、宗教的理由に基づく迫害)とされています。階級や責任ではなく、その人が何をしたのか、というところに注目されています。
靖国神社ではB・C級戦犯者が一般の戦没者とともに祀られてきただけでなく、1978年にA級戦犯とされた戦争指導者たちも合祀されました。
つまり、政治家が靖国神社を参拝するということは、公人としてなら、宗教活動と政治との関係が問われ、私人としての参拝についても、誰に思いをはせるのかによって、その意味は大きく変わると考えられます。SNSには「参拝をすること自体が戦争を肯定することになる」という言葉まで飛び交い、厳しい視線が注がれています。
靖国神社を訪れて感じたこと
あくまで筆者個人の感想ですが、最初に覚えたのは緊張感でした。写真撮影に関する細かい規定や警備の手厚さが印象に残りました。
ただ、参拝客を観察していると、そこにいるのは普通に神社に訪れた人でした。看板をよく読んで内容を理解しようと努めている人の姿は他の神社を訪れるときよりも多く、歴史をもっと知りたいと思っている人が訪れていると感じられました。
靖国神社が特定の歴史観と結びついてきた場所であるため、意見の違いが生まれることは避けられません。国を動かす政治家が宗教と密接に関わりすぎていないか、そして政治的なパフォーマンスとして利用されていないのかを常に問い直す姿勢が重要です。メディアはその参拝の持つ「意味」を明らかにするために、これからも参拝を報道することでしょう。
【参考資料】
2026年10月20日付 朝日新聞(東京)4面 「靖国の例大祭、私費で玉串料 首相、参拝は見送り」
2026年9月3日 朝日新聞デジタル「政治家の靖国参拝なぜ問題?「パフォーマンスじゃない」と言うけれど」, https://www.asahi.com/articles/ASV911C8TV91DIFI00RM.html.
2023年11月28日 朝日新聞GLOBE「A級とBC級戦犯の違いは?東京裁判は大国主導だった?背景にあった中小国からの訴え」https://globe.asahi.com/article/15065557.
2026年10月20日付 読売新聞(東京)4面 「首相が靖国に玉串料を奉納 党総務会長通じ」
靖国神社ホームページ、「靖国神社の由緒」https://www.yasukuni.or.jp/history/detail.html.