夏の太陽に輝く白球を追いかける高校球児たちの姿は、今年も多くの観客を集めています。8月11日、筆者は甲子園に足を運びました。第1試合、第2試合を1塁側のアルプススタンドから観戦し、それぞれのブラスバンドのメンバーに話を聞きました。
57年分 ご縁繋がり野球と共に
第1試合、秋田県代表の横手高校は57年ぶり2度目の甲子園出場でした。地元の方々の応援には熱が入り、市民会館ではパブリックビューイングも行われていることを横手市役所の方に教えていただきました。
校歌演奏中の横手高校アルプススタンド(2026年8月11日 筆者撮影)
ピッチャーの佐藤宙斗選手に注目して横手高校の全試合を観戦したという声、写真に撮ってみんなに渡したいんだという言葉。甲子園への思いが強くあふれ出ている応援席の姿は、敦賀気比高校に何点入れられても変わることはありませんでした。
そんな中、ブラスバンドの演奏曲には「YOKOTE」の文字が入った曲がありました。 印象的なリズムに、聴いたことあると気が付いたプロ野球好きの筆者は、思わずクラリネットを演奏していた又井そよ香さんに話しかけました。
『Fight oh! YOKOTE』と名付けられた曲は、横浜ベイスターズの『Fight oh!YOKOHAMA』を作曲した方のパートナーが横手市の出身であったことがきっかけとなり、「良ければ使ってください」と提供してもらったそうです。選手が二塁まで進むとすぐに演奏されるこの曲では、声援がひときわ大きくなり、アルプス席が熱く盛り上がる瞬間でした。「チャンステーマなんです」と微笑みながら教えてくれた又井さんの顔には、周りの友人と共にこの曲を演奏する喜びがあふれていました。
ピッチャーの佐藤選手と同じ小学校だったという又井さんが野球に興味を持ったのは最近になってからとのこと。ブラスバンドをするなかで、野球のルールを知ったそうです。
「これがきっかけで野球に詳しくなりました」
「小学校から知っている方が甲子園で投げているなんて、不思議です」
思わぬ高校野球との縁をかみしめて演奏しているようでした。
演奏をする又井さん(2026年8月11日 筆者撮影)
秋田よりも日差しがきつい甲子園。「みんなで夜行バスで来ました。眠れなくてちょっと辛かったです」と苦笑いした又井さんですが、熱中症に気をつけて、と声をかけると、とてもうれしそうな笑顔で応えてくれました。
揺るがぬ信頼 先輩を追いかけて
第2試合、智辯和歌山高校の応援団によるCの人文字が甲子園に浮かび上がります。
アルプス席の最前列に並ぶのは太陽に輝くドラムセット。白い帽子をかぶったパーカッションパートの小さな背中に声を掛けました。
演奏をする智辯和歌山のパーカッションパートメンバー(2026年8月11日 筆者撮影)
学年を聞くと、中三!中二!と元気な声が返ってきました。中高一貫校ならではの姿です。話を聞いた8人のなかで高校生は2人だけで、あとはみんな中学生であること、小学生からこの学校にいる生徒がとても多いことなどを教えてくれました。
一番応援している選手を尋ねると、それぞれから返ってくるのは違う名前。「どの選手もみんな魅力的だから」と笑顔の姿からは、野球をたくさん見てきた自信すら感じられます。
なんでブラスバンドをしたいって思いましたか?と尋ねると、岡本諭依さんが答えてくれました。
「小学校からこの学校で。中学の先輩がやっぱりかっこよく見えたので入りました。あと、やっぱり音楽が好きやから」
周りからも「良いこと言う!確かに!」と声が上がりました。そして、対戦相手の社高校の選手が2塁まで進んでも、「大丈夫、ゲッツー取ってくれるから」「点は取られへん」と力強い言葉。応援団と野球部の強い信頼を口にしました。
守備の時間が終わり、演奏に入る直前。次の曲の確認をとっさに済ませ演奏に入る姿は、中学生も高校生もなく、まっすぐな赤い背中でした。
ブラスバンドだったから県大会で野球部の応援をすることになった。それだけだったのが、激戦を勝ち抜き全国大会に進み、甲子園でチャンステーマを演奏したい、絶対に勝てる、という強い信頼へと変化していく姿を見ました。
輝く瞳は、この夏、そしてその先も続いていきます。


