甲子園がある兵庫県は11日、最高気温31.9度を記録した。カンカン照りの太陽が直射するグラウンドやアルプス席は、その数字を遥かに超える体感温度になっていたはずだ。
第1試合(2回戦)、秋田県代表「横手」対福井県代表「敦賀気比」。筆者は、横手高校アルプス席で、それぞれの暑さ対策を聞いて回った。これまで以上に熱闘で盛り上がる全国高校野球選手権大会は、さまざまな形で伝統の殻を破ろうとしている。
■大荷物を抱えた子ども連れ
入学前の男の子3人を連れたご夫婦は、暑さ対策グッズでいっぱいになった大きなリュックを抱えていた。「飲料だけで10本以上持ってきました。熱中症になることが一番怖いので、子どもたちにはこまめに水分を取らせています」
「暑さ対策としては、子どもたちに帽子を被せ、扇風機を持たせています。気休めに過ぎないかもしれないけれど、少しでも涼ませたいですね」
アルプス席の子どもたちはみんな、暑さに堪えかねたような表情だったものの、グラウンドにくぎ付けになっていた。球児らの躍動にあこがれ、十数年後にこの地を訪れる子どももいるのだろうか。
■太陽の光に苦しむブラスバンド
攻撃のタイミングでは、各校ブラスバンドの演奏が試合を盛り上げる。横手高校のブラスバンドも、「倍倍FIGHT!」や「かわいいだけじゃだめですか」といった最近の人気曲とともに試合を一層熱くした。
吹奏楽部の2人の女子生徒は、ブラスバンドとしての暑さ対策を教えてくれた。
「グループを分け、交替で演奏するようにしています。長時間演奏すると一気に体力が奪われるので。休憩が途中に入るだけで、かなり変わります」
「楽器によって苦労は違うんです。特に、木管楽器は熱で悪くなるので、手入れが大変です。私たちは自分の体調だけでなく、楽器のことも気にかけなければならない。しかし、その大変さを超えるくらいに、試合を盛り上げられることが嬉しいです」
■白袴をまとった応援団長
半袖短パンの学生たちの中に、ひときわ熱を帯びた男子生徒がいた。白袴を着た応援団長小西結都さん(3年)だ。小西さんは試合の途中、応援にかけた思いを教えてくれた。
「横手高校が甲子園に出場できたのは57年ぶり。半世紀以上かけてこの土地に戻って来たからには、絶対に優勝してほしい。勝つために、全力でエールを届けるだけです」
応援団の熱い思いは変わらない。しかし、暑さのために変えたしきたりもある。
「応援団は例年、学ランを着て応援をしていました。しかし、この暑さだとさすがに体調を崩す者が出てしまうということで着用はなくなりました。学生間で話し合い、先生の合意を得た結果です」
「ただ、この白袴は応援団の伝統、これだけは変えられない。暑いけれど、袴を着て全力で応援することは変わりません」
取材に答えてくださったお礼の言葉に、小西さんからは「押忍」の返事が返ってきた。各校の応援や演奏にかき消されることの無い、力強い声だった。
■知恵を絞る運営側
大会運営も選手・観客らの体調不良を防ぐため、手厚い暑さ対策を実施している。その一例が、5回終了時に設けられた「クーリングタイム」だ。
原則として選手はこの時間、一・三塁ベンチ裏のクーリングスペースで休憩をとることになっている。理学療法士の指導のもと、手のひらや頚部などを冷やし、アイススラリーやスポーツドリンク、経口補水液などを摂る。観客向けにも水分補給や休憩を促すアナウンスが流される。また、学校応援団向けに、空調のきいた臨時休憩所が設けられていた。
「あらたにす」取材班のインタビューに対し、大会運営委員の丑田滋さんはさまざまな暑さ対策の背景を語った。
「世間の注目度が高いからこその対策です。何よりも選手の健康が最優先されるべきであること、事故が起こる手前で防がなければならないことを示さなければならないのです」
日本各地で40度を超える酷暑日が記録され、甲子園で酷暑が記録される日もそう遠くないかもしれない。夏の伝統を絶やさぬために、自然環境に合わせたアップデートが求められている。球児たちの熱い想いの裏には、暑さ対策に奮闘する関係者の努力があった。
参考資料:
・バーチャル高校野球 甲子園の暑さ対策
https://vk.sportsbull.jp/koshien/feature/heatcountermeasures/
・阪神甲子園球場 大会日程
https://koshien.hanshin.co.jp/highschool/summer2026/schedule.html
・気象庁 過去の気象データ検索
(最終閲覧はすべて2026年8月13日)







