10月26日から11月5日にかけて、東京ビッグサイトで開催された「ジャパンモビリティショー」(JMS)。
各社のブースで目玉となったのは電気自動車(EV)でした。
プレスデーの取材をもとにモビリティの未来について考える「〈特集〉JMS2023」。
3回目は「環境編」です。
◯EV化の潮流
近年、気候変動対策の重要性が叫ばれており、自動車業界においても脱炭素化へ向けた取り組みは待ったなしとなっています。
こうした中、EVの生産・販売は世界中で急速に拡大しつつあります。
ヨーロッパでは、バッテリーEV(BEV)の新車登録(2022年)が、すでに全体の1割以上を占めています。
中国では、国策によってEVの普及が急激に進んでおり、22年のEV販売台数は約540万台となっています。これは、日産自動車の世界販売台数、約330万台(22年度)を大きく上回る数字です。
◯先行する海外勢
EV事業で先行する海外メーカー。JMSには、メルセデス・ベンツ、BMW、BYDの3社が参加しました。
中でも注目を集めたのが、今回が初出展となるBYDです。
BYDは中国の電気自動車大手で、新エネルギー車の累計生産台数は500万台以上にのぼり、米テスラを猛追しています。
ブースでは、すでに市販されている「BYD DOLPHIN」のほか、24年春発売予定の「BYD SEAL」などが展示されました。
「BYD DOLPHIN」の値段は363万円からとなっており、「日産リーフ」(約408万円〜)や「テスラ Model Y」(約563万円〜)など他のEVに比べて割安になっています。国の補助金65万円を使えば300万円以下で入手可能です。
BYDジャパンの劉学亮社長は報道陣に対し、「電気自動車を人にとっても地球にとっても不可欠なモビリティに進化させていく」と力を込めました。
ベンツやBMWもコンセプトカーのほか、すでに市販されているEVを複数台展示していました。
◯巻き返しはかる国内勢
こうした中、国内メーカーも遅れを取り戻そうと、EV化への取り組みを加速させています。
トヨタ自動車は、SUVタイプの「FT-3e」やスポーツカータイプの「FT-Se」といったBEVのコンセプトカーを発表しました。1回目の特集で紹介した「KAYOIBAKO」もBEVです。
また、同社のレクサスブランドは、26年に導入予定の次世代BEVのコンセプトモデル「LF-ZC」を公開しました。航続距離は従来のEVの倍以上となる1000kmを目指しています。レクサスは、35年までに完全にBEVブランドへと転換することを発表しています。
日産自動車は、5台のEVコンセプトカーを出展しました。スポーツカーやミニバン、SUVなどさまざまな種類があり、近未来的なデザインが特徴的です。
ただ、こうした車両の多くは展示を目的としたコンセプトカーであり、EV市場への本格的な投入は数年後になるといいます。市販車を多数展示した海外勢に比べ、出遅れている感は否めません。
JMS開幕直前の先月24日、三菱自動車は中国市場からの撤退を発表しました。EV化の遅れが原因です。今後もEVへのシフトが進まないようであれば、同様の事態が相次いで生じる恐れがあります。
かつて世界を席巻した日本の自動車産業は、EV化の世界的な流れを前に大きな岐路に立たされています。
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〈特集〉JMS2023 未来のモビリティを考える(1)ライフスタイル編
〈特集〉JMS2023 未来のモビリティを考える(2)テクノロジー編
参考記事:
10月26日付 日本経済新聞朝刊3面(総合2)「ソフト・AI「クルマ」変える ジャパンモビリティショー開幕 感情解析し演出/自動運転、低コスト」
10月26日付 読売新聞朝刊(東京)2面(総合)「「モビリティショー」きょう開幕」
10月26日付 読売新聞朝刊(東京)8面(経済)「モビリティショー 最新鋭EV続々」
10月26日付 読売新聞朝刊(東京)9面(経済)「「移動」の在り方 提案 モビリティショー 快適さ・エンタメ性重視」
10月26日付 朝日新聞朝刊7面(経済・総合)「乗り物の祭典 モデルチェンジ途上 「未来の技術示せる」「車屋なので、それ以外は…」 きょう開幕」
10月25日付 読売新聞朝刊(東京)8面(経済)「三菱自動車 中国の生産 撤退を発表」
参考資料:
トヨタ自動車株式会社「JAPAN MOBILITY SHOW 2023 特設サイト」
日本貿易振興機構「中国、2022年の自動車販売台数は新エネ車が支え2年連続増、輸出は世界2位に」
日本貿易振興機構「EUの2022年の新車登録台数、BEVが初めて100万台越え(EU)」