【特集】コロナ禍のイベントを再考する 「手に取って触って初めてその世界を知る」

10月31日、福岡県糸島市の志摩中央公園で開催されている「糸島ハンドメイドカーニバル2020+1 in Autumn」に行ってきました。29日からのイベントの最終日。コロナ禍は続いていますが、多くの来場者でにぎわっていました。

毎年4月と10月の年2回開催されるハンドメイド作品の祭典です。屋外に100以上の出展者が並んでいます。「ハンドメイドエリア」だけでなく、「旨いものブース」もあり、糸島の人気店や地元の食材を生かした食べ物が、キッチンカーやテントで販売されています。コロナ禍でお祭りやイベントがほとんど中止になっているなか、人が集まるイベントは珍しいともいえるでしょう。対面でのイベントの意義を考える機会となりました。

このカーニバルも昨年度は中止になっていました。今回は感染防止対策をしたうえで開催にこぎつけました。イベント名の「2020+1」には、つらかった昨年から一歩を踏み出す思いが込められています。

イベント会場につくと、スタッフから一人一人が検温を受けた後、受付に進みます。手をアルコール消毒し、イベントのパンフレットをもらって、ようやく入場です。会場の周りはカラーコーンやロープで囲われており、受付を通った人しかエリアに入れないようになっていました。

感染対策をしている受付。コーンでエリアが区切られていました。

会場のいろいろなところに設置されている消毒

作品を手に取って見たり、出品者と話したりすることが多いハンドメイドのイベントだからでしょうか。至る所にアルコール消毒が設置されており、安心して作品を見ることができます。

人が非常に多く、来場者同士肩がぶつかることも

テイクアウトのキッチンカーやテントが並ぶエリア。来場者はマスク着用を徹底していました。

今回お話を聞いたのは、糸鋸工房ジョイクラフトの石井哲さん。大分県に工房を持つ彼は今年71歳。「今回来ている出展者の中で3本の指に入るぐらい歳が上なんじゃない?」と笑顔で話し始めてくれました。作っているのは木製のアクセサリーやコースター。電動糸鋸を使い、一つ一つ模様を切り出していきます。

50歳で脱サラをした石井さんは糸鋸と出会い、60歳ごろから作品を作り始めたそうです。昔の作品は「今では恥ずかしくて人前に出せない」と振り返っていました。以前はデザイン系の仕事をしていたそうで、その時の技術が現在にも活きています。

こだわりは「材」。宮崎県小林市で調達した国内産の銘木材で作品を作っています。20~30年自然乾燥させてできた「材」をどの作品に使おうか考えるところから作業は始まります。糸鋸は扱いが難しく、「特にまっすぐな線をうまく切ることができるまで時間がかかった」とのこと。一つの作品の制作にかかるのは1週間以上。製材所で板にしたものに手を加え、デザインを施し、糸鋸で仕上げていきます。

せっかく作った素敵な作品も、コロナ禍の影響で「春から今回のイベントまでなかなかお店を出すことができなかった」そうです。お店を構えていない石井さんにとって、イベントは大事な収入源。以前は大分で作業をしつつ、九州や中国・四国地方でのイベント約50カ所に出店していましたが、コロナ禍で「収入が0の月もあった」と話してくれました。

インターネットでほしいものを検索し、購入ボタンを押せばすぐに買うことのできる時代。対面でのイベントの良さについて「手に取って、触って初めてその世界を知ることができる」と言います。「普通は作品を見るだけ。できるまでの過程はあまり知られていない」としたうえで、「こうして会ってお客さんと話すことで、価値を知ってもらえる」と教えてくれました。

たしかに石井さんの作品は3000~5000円と、今回のイベントの出品のなかではかなり高めでしょう。しかし、お話を聞くと、なぜこのコースターが4000円するのかが分かるようになり、価値観が合ってきたようです。買わないお客さんも少なくありませんが、「本物を見つけてくれる人にこのイベントでも出会いたい」と石井さんは話してくれました。

石井さんにお話を伺ったあと、100以上のお店をすべて見ました。かわいいなと思った作品を手に取ると、「これは十二の巻という多肉植物で、アロエみたいでしょ?」と話しかけてくれる出展者と出会いました。植物一つ一つを説明してくれ、どんな水やりがいいのか、よく購入する人の特徴など、詳しく教えてくれました。彼も店を構えておらず、「普段は家で植物たちを育てていて、こういったイベントに参加する」と話してくれました。催しがなかった時期は「さみしかった」そうです。

購入したサボテン。動物の置物もかわいらしい。

お話を聞く中で、自分でお店を持っていない方が多いことに驚きつつも、やはり対面のイベントの魅力は「その場で生まれる客と出展者の会話」だと実感しました。最近筆者はインターネットで検索し、安いものから順に表示したのち、好きなものを買うのが当たり前になっていました。商品が作られる過程を考えたことはほとんどありません。

なぜその値段なのか、なぜその材料が使われているのか、制作者に思いを馳せ、価値観を知ることが、インターネットでほとんど解決できる今の時代だからこそ必要になってくるのではないでしょうか。「そのコースターには僕の物語も詰まっている」と話してくれた石井さん。彼ら出展者の思いを共にできる対面のイベントはコロナ禍を経てさらに大切になっています。

石畳から連想した模様。石井さんの作品

 

参考記事:

31日付 朝日新聞朝刊25面(14版)「1週間の感染者数今年最低を更新」

 

参考資料:

2021年4月4日 糸島ハンドメイドカーニバル公式ブログ