来春から記者として働く私は、母から聞いたある会話にモヤモヤしています。
「うちの子、記者になるの」
母の言葉に、ある人はこう問いかけたそうです。
「息子さんだっけ?」
またある人は、こう言いました。
「娘さんが?いやあ、女の子で。すごいなあ」
実際に働いたことのない立場から物を言うのは気が引けますが、女性にだって十分に務まる仕事です。いや、むしろ多様な価値観を認めようとする社会において、女性ならではの視点から報じるニュースは、より必要性を増しています。
それなのに、記者=男性の印象は依然として強いまま。なぜでしょうか。
国際女性メディア財団(IWMF)が世界59か国522社のニュース会社に実施した2011年の調査によれば、フルタイムで働く女性記者の割合は33%。中でもアジア・オセアニア地域は少なく、27%と低い水準です。
同地域におけるメディア企業の女性比率は、経営幹部で21.6%、管理職で12.9%。女性が約半数を占める欧米に比べると、大きな遅れをとっています。
その理由として挙がっているのが、「時間的な制約」です。報道の現場では、より早く、より正確なニュースを追いかけることが求められています。仕事の性質上、長時間かつ不規則になりやすいのが現状です。
一方、どの国でも、子育てや親の介護など家族のケアを担うのは女性であることが多いよう。仕事と家庭の両立という点で、女性の方がより難しい立場にあります。会社のサポート体制はもちろんのこと、社会の理解が必要不可欠です。
また、現場からは「女性だからという理由で、教育や健康といったソフトなテーマが割り振られることが多い」といった声も挙がっています。ですが、関心領域や得意分野は、性別の枠に留まるものではありません。
「多様性」を訴える報道機関が、「男であること」「女であること」にとらわれていて良いのでしょうか。
年齢や出身地、未婚・既婚、子供の有無、性的指向といった様々な「個性」や「経歴」が活かされるような職場であってほしいものです。それでこそ、色々な価値観を持つ読者や視聴者に必要とされるニュースを届けられるはずだから。
「女性記者さん」ではなく「田端記者」として働ける未来がそう遠くないことを信じて。
参考:
23日付 日本経済新聞朝刊21面(女性)「ニュース担い手 多様性不可欠」