「パプリカ」怖い

 「現代用語の基礎知識」選 2019ユーキャン新語・流行語大賞のノミネート語に選出された「パプリカ」をご存知だろうか。「歌手の米津玄師の作詞・作曲、プロデュースによる小中学生の音楽ユニット「Foorin」の曲で、「NHK 2020応援ソングプロジェクト」の応援ソングとして制作されたものである。

 11月25日付朝日新聞朝刊の声(Voice)には、「笑顔作る『パプリカ』に感謝」という投稿が掲載されていた。そこでは、「パプリカ」が放課後にデイサービスなどに通う子供たちの間に一体を生み出し、非常に感謝しているとされ、子供の間でどれほど「パプリカ」が浸透しているのかがよく伝わってきた。

 確かに、筆者も学童保育でアルバイトをしているが、子供たちが皆揃って歌い踊る姿をよく目にする。一人の子供が口ずさめば、隣の子供が歌いだし、そのまた隣も、といった微笑ましい光景が学童保育では散見される。

 しかし、なぜ、半数を超えるほどの子供たちが歌えるまでに「パプリカ」は浸透していったのか。

確かに、非常に単純な曲であり、子供にとっては大変歌いやすい。しかし、そのような歌いやすい曲なら「森のくまさん」や「いちねんせいになったら」など星の数ほどある。なぜ一人勝ちしたのか。

 疑問に思った筆者は、子供たちに歌えるようになった訳を尋ねてみた。すると、「体育大会で踊った!」や「音楽会で歌った!」など、学校行事で歌ったり踊ったりする機会があったのだと口を揃えて答えてくれた。

 たしかに極めて歌いやすく、踊りやすい。その為、学校側が体育大会や音楽会で採用しているのだろう。また、「2020オリンピック応援ソング」であり、流行にのっているという面もある。しかし、筆者は何の圧力もなしに、全国の子どもがそろって歌うほど広がった「パプリカ」の拡散力、いや学校の拡散力に底知れぬ恐ろしさを感じてしまう。

 小学生への聞き取りから、「パプリカ旋風」は学校側が生み出した現象と見てよいのではないか。子供が歌いやすいキャッチーな曲を学校側が一斉に行事などで使えば、いとも簡単に子供を熱狂させることができることを示した。

 こんな無害な良い曲ならば、子供たちの間で「旋風」がいくら巻き起ころうが問題はない。しかし、偏った政治的主張が巧妙に含まれた曲が、学校を通して一斉に子供に伝わったら・・・。恐ろしい事態を引き起こすのではないだろうか。

 私たちは昨今の「パプリカ旋風」から子供たちがいかに扇動されやすい存在かをあらためて学び取る必要がある。また、学校の子供に対する影響力の大きさも注目すべきであろう。

プロパガンダは娯楽の顔をしてやってくる。

 この言葉を胸に刻み、学校側は「パプリカ」を子供に歌い踊らせていくべきではないか。

 

参考記事:

25付朝日新聞朝刊(13 版)6面「声(Voice) オピニオン&フォーラム 笑顔作る『パプリカ』に感謝」