16日。2020東京五輪のマラソン・競歩については札幌市での開催を検討しているとのニュースが飛び込んできました。「なぜ今?」そう思わずにはいられません。本番まで10か月足らず。ここにきて国際オリンピック委員会が異例の会場変更に踏み切ろうとしています。
日本の夏は、たしかに暑い。花王が6月に実施した、都内在住の在日外国人を対象にした日本の夏への意識調査によれば、全体の4分の3が夏バテを経験しています。酷暑のイメージのある中東やアフリカ出身者の8割以上も、「出身国より日本の方が暑い」と回答。また、「湿気があるため呼吸困難になりそうなくらい息苦しい」との声も寄せられました。気温だけでなく、湿度も高い気候は、やはり身体に堪えるようです。
東京よりも7、8月の平均気温が5度前後低いと言われる札幌での開催。選手の健康のためには、正しい決断でしょう。しかし、なぜもっと早く会場変更を打ち出せなかったのでしょうか。素人でも、うだるような暑さのなかでのマラソンは、危険だと分かります。IOCや大会組織委員会は、暑さ対策で、スタート時間を早朝に設定するなどの対策を打ってきました。ならば、会場についても柔軟に考えていれば、直前の変更という事態には陥らなかったはずです。
「東京」に照準を合わせ多くの人が対策を練ってきました。ウェザーニューズもその一つです。東京五輪が決まり、「スポーツ気象は役に立つ」との認識を広げる狙いも込めて、専任チームまで立ち上げていました。五輪のマラソン・競歩にも、もちろん協力しています。スピードで劣る日本選手が環境を味方につけられるように。そう願ってデータの蓄積や分析に力を入れてきましたが、また一からやり直しです。8月の細かな気象分析など、もう出来ません。
コースにも課題が残っています。読売新聞によれば、東京都側は、東京の魅力を伝えるコース選定、さらには路面の温度上昇を抑える舗装など、コースのみで数十億円を投じてきました。それを使わないだけでなく、また新たに札幌市にコースを設けなければなりません。経費がどこまで膨らむのか。当初掲げていた「コンパクト五輪」とは程遠いものになりそうです。
どこか行き当たりばったりに見える今回の東京五輪。もっと事前に検討を重ねるべきだった事項が多いように感じます。無事、五輪開催の日を迎えられるように。今は、ただ願うばかりです。
参考記事
20日付 読売新聞(東京12版) 3面「社説 選手の健康考えた『札幌開催』」
6日付 朝日新聞DIGITAL 「聞きたい2020へ スポーツと気象 データどう使う?」
16日付 日本経済新聞電子版 「東京五輪のマラソン、札幌開催を検討 IOC」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51051770W9A011C1000000/
参考資料
7月26日 東京新聞「日本の夏「母国より暑い」 在住者150人に意識調査」
https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201907/CK2019072602000285.html
10月18日 日刊スポーツ「3年調査台なし…マラソン札幌開催なら地の利下がる」
https://www.nikkansports.com/sports/athletics/news/201910180000739.html