贅を極めれば税を制す

日経平均株価が一時2万円に到達した10日、ビール大手5社は1~3月のビール出荷量が前年比9.1%減だったと発表しました。あれ?景気が良くなっているのに消費が落ち込んでいるの。不思議に思う方も多いと思います。どうも消費増税を前にした駆け込み需要の反動が大きいようです。

ビール好きの筆者がこの1年を振り返ってみると4月を境に確かに価格が上がり、手を出しにくくなったなと感じます。とはいいながら、各社が様々な特徴を打ち出した限定商品の販売を頻繁に繰り返していたこともあり、新商品を手に取るような感覚で購入していたため、それほど価格に敏感でなかったような気がします。

酒税制度の見直しが検討されています。ビールの税率が下がることを見込み、発泡酒や第3のビールから通常のビールに各社は力を振り向け始めています。付加価値の高い商品を開発するのは、値上がりへの対抗手段にとどまらず新たなファンの獲得も狙っています。

酒税制度の縛りの中でビール業界は第3のビールなどで新市場を創出してきました。税制が変わることによって最も影響を受ける一例であり、ある意味で企業努力のモデルケースといえるかもしれません。

でも、酒税の見直しは税金を集める側の論理によってなされており、歪んだ市場を改めるといった目的ではありません。これまでの、なんとか税金のかからないような商品を開発しようというメーカー側の工夫も、儲かっているから第3のビールの税金を高くしようという政府の思惑に吹き飛ばされそうな風向きです。

第3のビールの税率を上げる代わりに通常のビールの税率が下がるのは消費者目線からは歓迎したいことです。しかし、さきに紹介したような消費増税に対する各社の知恵比べのようなモチベーションは失われていくかもしれません。

今後は嗜好品であるからこそ価格にとらわれない発想が必要なのでしょうか。

 

参考記事:11日付 日本経済新聞朝刊(東京13版)11面「減税にらみ主力品集中」

同日付 朝日新聞(同版)7面「ビール系の出荷9.1%減」