消費税が10%になって、まもなく1週間が経過します。増税と同時に導入された軽減税率とキャッシュレス決済によるポイント還元制度は、まだまだ国民に馴染んでいるとは言えない状況です。中でも、QRコードなどを使った決済アプリは多岐にわたり、乱立しているようにも見えます。消費者は選ぶだけでも大変でしょう。
最近ではQRコード決済大手の多くで、系列会社による「信用スコア」の導入が進んでいます。自社サービスの利用の仕方などを分析し、一人一人の信用力を採点する仕組みです。信用を点数化するのは機械的に理解するのに便利ですが、わかりやすさに「飲まれてしまう」危険も考慮しなければなりません。
すでに中国では、流通大手のアリババグループが台頭し、キャッシュレス化が進みつつあります。人工知能が判断したスコアが高ければ、ローンを簡単に組めるなど恩恵があることから、スコアを上げることに必死な人もいるようです。本来利用するためのスコアに、むしろ利用されてしまうという結果を生むことも否定できません。決済サービスの場合、購買履歴などのデータを分析することで個人が特定されてしまう可能性もあります。
個人情報を取り扱う際、最近企業がよく使う言葉が「個人を特定できないよう、匿名化した情報を利用する」といった文言です。しかしあらゆるデータが関連付けられている社会で、本当にすべての属性を切り離した分析ばかりが行われているとは限りません。先日もリクルートの関連会社が就活生の同意がないまま、個人を特定できる形で情報提供したことが物議を醸したばかりです。
朝日新聞4日付夕刊では、スマホのGPS機能を常時オンにして平気か、という読者からの疑問が記事になりました。読んでみると、グーグルやアップルなどの開発企業やセキュリティ企業の社員による安全性を説明するコメントが掲載されています。しかし、GPS機能を利用するアプリは前述の企業に限らない、様々なソフトウェア開発者が作ったものです。情報が使われるリスクはゼロとは言えません。ベースとなる部分が安全であっても、その上に立つサービスの段階でリスクが高まることもあるでしょう。
企業が、親切丁寧に情報セキュリティのリスクを説明することはありません。だからこそ「表向き」の文言を見極め、自分なりに解釈する必要が、より一層求められていくように思います。
参考記事:
10月4日付朝日新聞夕刊(東京4版)1面「スマホGPS常時オン 平気?」
4月13日付日本経済新聞朝刊(デジタル版)「決済アプリが脅かすプライバシー 「便利」の代償とは」
参考資料:
「キャッシュレス推進の影で着々と近づく[信用格差社会]」(5月2日付、ハーバー・ビジネス・オンライン)
星新一『声の網』(1970,講談社)