多くの学生が怒っています。就活情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアが、学生の「内定辞退予測」を企業に販売していたことを、各紙が報じています。筆者も利用者のひとり。「就活を頑張る学生のための」就活サイトであると思っていたのに。残念でなりません。
今年の6月。友人のほとんどが就活サイトに登録をしていました。来年度は、就活ルールがなくなるため選考が早まることが予想されます。情報を早く、深く、そしてどれだけ多く収集できるかが成功のカギになる。皆、そう考えて動いています。
最近の就活サイトは充実しています。合同説明会を開催するだけでなく、業界研究セミナーも開いています。情報を入力すれば、同じ大学の人がどこにインターンを申し込んでいるかランキング形式で表示される。なかでも会場に行かずとも様々な企業の説明会を聞くことが出来たWEBでのインターンシップ合同説明会は重宝しました。
また企業側も、学生が就活サイトを利用することを見込んで採用活動に臨んでいます。自社の採用ページではなく、就活サイトからインタ―ンを申し込むことを必須としているところもあるほどです。就職活動において、就活サイトは不可欠な存在となっています。
その運営会社が、集まったデータから「内定辞退率」を計算して販売していたとは。利用者の誰が予想していたでしょうか。サービスの狙いとしては「辞退する可能性が高い就活生を引き留めるため」とし、採用の合否には使わないと確約した企業のみに販売したと説明しました。また個人情報保護法が義務付ける本人の同意は得ているとしています。そして、学生が登録する時に表示される規約には、サイト内の行動履歴を分析・利用することがあるものの、「企業などへの情報提供(選考に利用されることはありません)」との一文があります。
規約を読まなかった学生にも多少は非があるのかもしれません。データがビジネスに使われる今、より一層自らのデータを提供する際には慎重さが必要になってくるでしょう。しかし、運営会社は「選考に利用させることはない」と明記しているにも関わらず、企業に「選考中に」内定辞退率を提供し、提供データの利用方法については、企業に対して「口頭での確認」にとどまっていました。
これでは、選考結果に影響した可能性が否定できません。学生側が不利益をこうむったとしてもおかしくない状況であったと考えられ、学生の信頼を裏切ったと捉えられても仕方がありません。外部に「内定辞退率」を算出して提供するのであれば、しっかり学生側に説明する必要があったと思います。
いま私たちは、就職活動に真剣に取り組んでいます。自分がやりがいを感じることは何か。社会にどう貢献していきたいか。家族が出来たら、仕事と生活のバランスをどうやって取っていこうか。誰もが、自分ととことん向き合って将来について考えています。そして自分にあった会社はどこだろうと必死に就活サイトで情報を集めています。
就活サイト運営会社は、そのような学生を応援するものであるはずです。現在は、政府からの指摘で販売は停止していますが、学生に植え付けられた不信感は根強く残っていくことでしょう。
参考記事
8月3日付 日本経済新聞(12版)11面「リクナビ「内定辞退予測」販売」
同日付 朝日新聞(14版)3面「リクナビ「合否に使わぬ」合意企業に」
同日付 読売新聞(13版)33面「辞退予測 選考中に提供」