スクールカースト世代は「反安倍」が嫌い

さまざまな不祥事や問題発言を重ねながらも、支持率では一定の水準を保ち続ける安倍政権。不始末の度にリベラル派の論客からは「安倍政権崩壊論」が唱えられるが、今のところ全くといっていいほどその兆しは見えない。

朝日新聞デジタルの6月の世論調査(https://www.asahi.com/sp/politics/yoron/)によると29歳以下の安倍政権支持率は52%と全体平均より5ポイントほど高い。一方の不支持率だが、全体では33%なのに、29歳以下では21%にとどまる。29歳以下の若者は安倍支持の傾向があり、批判層が圧倒的に少ないことがわかる。なぜなのか。それは私たち若者特有のある秩序観に由来するのではないだろうか。

29歳以下の私たち若者が学生生活を送っていた時期は21世紀に入った頃から現在にかけてである。それは「スクールカースト」という言葉が誕生し、意識された時期であった。勉強以外の能力や容姿に基づき、一軍、二軍、三軍と分断されている階層のことで、中学や高校の教室の中に根付いている。一軍は、二軍以下を軽視し、二軍は三軍を軽んじる傾向にある。互いに交流することはほとんどなく、階層間の激しい対立は皆無である。それ故に、学級内ではある種の均衡が保たれるのである。

そのような緩やかな秩序の下では、一軍に不満があっとしても、多少我慢さえすれば二軍や三軍も仲間同士で「そこそこ」の学生生活を送ることができる。二軍や三軍が権力のある一軍にクーデターを起こすことは滅多になく、むしろ彼らを黙認したうえで、目立つことなくうちわで楽しむことを求めがちなのだ。

そのような学生生活を送ってきた若者であれば、「そこそこ」の環境下では、権力者に対する批判や反対、反乱は非合理的で、秩序を乱す愚かな行為と映り、嫌悪感さえ抱いてしまうのである。この世代特有の考え方秩序観、つまり「スクールカースト的秩序観」が「反安倍」嫌い=野党嫌いに繋がっているのではないだろうか。

現在の野党は、「なんでも反対」と揶揄されるように、反対ばかりという負のイメージがつきまとう。しかし、野党は英語で「opposition party」、反対党である。議会内で政権に反対することは当たり前の行為なのである。

そして、「スクールカースト世代」にとっては、たとえ感覚的なものでしかなくても、安倍政権下で「そこそこ」の生活が送れているにも関わらず、「なんでも反対」する野党の姿は不祥事や問題発言を繰り返す安倍政権以上に敬遠してしまうのである。

この秩序観は私にもある。ある自民党議員の事務所で手伝いをしている友人から「選挙のバイトをしないか?」と誘われたことがあった。まったくと言っていいほど抵抗感を感じず、金欠であったこともあり快諾した。でも、働き口が自民党でなく野党だったら、私は引き受けたか疑問だ。なぜなら、「なんとなく嫌」という気持ちがあるからである。

Twitterで安倍首相や自民党議員のツイートをリツイートする友人は、しばし見かけるのに、野党系の議員のツイートをリツイートする同年代は全くと言っていいほど見かけない。2015年、野党とともに安全保障関連法案に反対していた学生団体「SEALDs」に対して、私の周囲は極めて冷ややかに見ていたことも指摘したい。

このような「スクールカースト世代」から支持を得るためには、野党はどうすべきか。簡単に答えを導き出すことはできない。しかし、一つの策として、「Aに反対!」と主張するのではなく、「Bに賛成!」と主張する方法があるのではないだろうか。

安倍首相は3日の党首討論会で「自衛隊の存在を明確に位置づける。これは防衛の根本だ」と強調した。恐らく、9条への自衛隊明記という形で憲法改正に挑むであろう。そうなった時、野党は「憲法9条改正反対!」と主張するのではなく、違ったかたちでの憲法9条論を主張するべきだろう。野党は「スクールカースト世代」を無視するのか、理解を得る努力をするか。その選択が今後の党勢に大きく影響してくると考える。

参考記事

1日付朝日新聞朝刊(14版)23面「『安倍支持』の空気 2019参院選」

1日付朝日新聞朝刊(14版)23面「『安倍支持』の空気 2019参院選」

7日付朝日新聞朝刊(14版)1面「問う 2019参院選1」

朝日新聞デジタル「憲法改正・年金・消費増税…参院選の争点 各党の立場は」https://www.asahi.com/sp/articles/ASM745337M74ULFA019.html

参考文献

鈴木翔、本田由紀『教室内(スクール)カースト』(光文社新書)株式会社光文社、2013年