川柳で 不満も皮肉も 大笑い

『ボディコンを 無理して着たら ボンレスハム』

1990年のサラリーマン川柳、歴代1位作品です。「ボディコンってなんだろう」と首を傾げた私に、「ピッタリした体のラインがわかる服、バブル用語よ」と母が教えてくれました。

23日、「第一生命サラリーマン川柳」略してサラ川(せん)のベスト10が発表されました。1987年から続いており、今年でなんと32回目です。人間関係や生活における不満や皮肉を詠み、会社員から根強い人気を誇っています。ついクスッと笑ってしまったり、深く共感させられたりするものが多く、学生の私も毎年楽しみにしています。

ここで、今年のベスト10を紹介しましょう。

 

<第32回サラリーマン川柳 ベスト10>

1位『五時過ぎた カモンベイビー USA(うさ)ばらし』(60代女性)

2位『いい数字 出るまで測る 血圧計』(80代男性)

3位『メルカリで 妻が売るのは 俺の物』(50代女性)

4位『ノー残業 趣味なし金なし 居場所なし』(40代男性)

5位『「やせなさい」 腹にしみいる 医者の声』(不明)

6位『やっと縁 切れた上司が 再雇用』(60代男性)

7位『手紙書き 漢字忘れて スマホ打ち』(40代男性)

8位『下腹が 気づかぬ内に ひょっこりはん』(20代男性)

9位『U・S・A 流行りにのれない まあいっさ』(20代男性)

10位『叱っても 褒めても返事は 『ヤバイッス!』(70代男性)

 

年代別の投票結果を見てみると、最も票を集めたのは、20〜30代では3位のメルカリの句、40〜50代では4位のノー残業の句、60代では2位の血圧計の句でした。それぞれの年代が抱えている悩みや関心ごとがよく表れています。

年代別に見ていくと、昭和、平成、令和と移り変わる時代の流れを感じることができます。バブル経済の真っただ中だった1990年には、『一戸建 手が出る土地は 熊も出る』が詠まれ、地価の高騰からマイホーム探しが郊外へと広がっていく様子が伝わってきます。

株価が急落し、デフレ経済に突入した2000年代。追い討ちをかけるように2008年に発生した米国発の金融危機リーマン・ショック直後の句には、『「先を読め!」 言った先輩 リストラに』と世知辛い社会がうつし出されています。

10年代以降には、『叱らずに 育てた部下に 怒鳴られる(11年)』や『ゆとりでしょ? そう言うあなたは バブルでしょ?(16年)』、『生産性 語る上司の 非効率(18年)』など、世代間ネタや職場でのコミュニケーション問題が多く描かれています。令和の時代はいったいどんなふうに詠まれるのでしょうか。

どれも世代や性別を超えて思わずうなるような作品ばかりです。洒落やボケ、オチを捻り出しながら五・七・五の言葉に当てはめるのは、なかなか難しいんですよね。

泣きたくなるような出来事や耳を塞ぎたくなるようなニュースに溢れた世の中。暗い顔でうつむきながら日々を過ごすのではなく、たまには川柳に思いっきり笑ってみませんか。

 

参考:

24日付 読売新聞朝刊(東京14版)31面(社会)「サラリーマン川柳」

23日付 朝日新聞夕刊(東京4版)1面「サラ川で時代をしのぶ32歳」

第一生命 みんなのサラリーマン川柳プロジェクト