引退年齢「45歳」 人生は現役

世界を震撼させた、マリナーズ・イチロー選手(45)の現役引退。今朝の朝日・日経・読売では、紙面1面でその衝撃を報じています。SNSを眺めても、テレビをつけても、どこもかしこもこの話題でひっきりなしです。21日の引退会見までに、日米で積み上げた安打は4367本。「日本の野手は通用しない」という米国での先入観を覆し数々の記録を打ち立ててきた彼の姿に、多くの人が心を動かされてきました。

これまで、イチロー選手は「最低50歳までは現役」と公言してきました。会見では、「有言不実行の男になってしまった」と語っていますが、40歳を迎える前に引退することがほとんどだと言われる野球の世界では十分すぎる年齢です。

一般的な社会人にとって、「45歳で引退」は縁の遠い話でしょう。日本経済新聞によれば、45歳以上の大企業社員は現在、全国に約500万人います。バブル期に大量採用された世代です。社員数が多く、そのうち約200万人は管理職になれなかったり、役職定年を迎えたりしてポストがないと推定されています。そうした世代から会社への不満を聞かされ、幻滅する若い社員が後を絶たないそうです。そんな環境では、若手からベテランまで、誰もが息苦しさを感じずにはいられません。

人生100年時代。仮に100年生きるとしたら、45歳は人生の折り返し手前です。残りの人生半分をどう生きるかは重要な問いになります。誰もが元気に暮らし続けていくためには、働く環境や人生設計のあり方について見直す必要がありそうです。

20日に公表された国連の幸福度ランキングによれば、日本の幸福度は156カ国・地域中58位。ここでの「幸福度」は、一人あたりの国内総生産(GDP)、社会支援、健康寿命、寛容さなどを基準に数値化したものです。数値を下げているのは、「自由度」や「寛大さ」を評価する項目でした。「定年がキャリアの終着点」「管理職に就くことが仕事のゴール」などといった従来の考え方に縛られず、もっと自由な考え方でキャリアや人生を見つめられたら、もう少し生きやすい世の中になるのではないでしょうか。

これからの動向に注目が集まるイチロー選手。野球人生こそ引退したものの、歩んできた時間と同じ長さだけ、新しい人生を歩むことになります。次はいったいどのような形で輝くのでしょうか。今後の活躍に期待です。

 

参考記事

22日付 朝日新聞朝刊(東京14版)11面(スポーツ)「イチロー 4367の勲章」

同日付 日本経済新聞朝刊5面(オピニオン)「進化続ける『働きたい会社』」

同日付 日本経済新聞朝刊42面(社会)「日本の幸福度 58位に低下」

同日付 読売新聞朝刊(東京14版)19面(スポーツ)「イチ流 極めた28年」