世界遺産を破壊することは「戦争犯罪」です。国際刑事裁判所(ICC)の設立条約は、歴史的建造物への攻撃を「戦争犯罪」と規定しています。破壊が確認されれば、国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)がICCへ捜査を要請します。過去に事例もあります。西アフリカのマリで2012年、世界遺産都市「トンブクトゥ」が武装勢力によって破壊された際、捜査の手続きが進められました。
タイトルのようなことが起これば、過去のケースと同様、捜査が始まるでしょう。しかし、あくまで「もしも」の話です。破壊されるようなことがあっては絶対にいけません。ましてやそれが「テロ組織」による犯行であっては…。
過激派組織「イスラム国」が文化財を破壊しました。破壊されたのはイラクの博物館に所蔵されている彫像。アッシリア時代の遺物や古代都市遺跡の像とみられています。「イスラム国」の戦闘員が貴重な文化財をハンマーでたたき割る動画が公開され、事態が発覚しました。
「民衆を動揺させ、思い通りに操るため、恐怖を与える戦略を取っているのだ」
ユネスコのボコバ事務局長は「イスラム国」を非難します。同時に、先月27日にICCへ捜査を要請したことも明らかにしました。
遠い国の話ではあります。しかし、歴史的建造物は人類共通の宝です。想像してみてください。10円硬貨で有名な鳳凰堂や、阿弥陀如来坐像が破壊されたなら…。皆さんはどう感じますか?初めて「平等院」を訪れた際、圧倒的な迫力で日本史に触れられた感動を今でも鮮烈に覚えています。「あの静かな雰囲気が壊されてしまったら…」と考えるだけでゾッとします。「イスラム国」の蛮行は、地球に住む全人類への挑戦です。捜査の進展に注目します。
【参考記事】
1日付 読売新聞朝刊(大阪14版)2面「ユネスコ『イスラム国』非難 文化財破壊」