見えない大人と子供の境界線

子どものころは早く大人になりたいと思っていたのに、大人になるといろいろなしがらみに囚われてしまいます。あの頃に戻りたいと願う読者の方も少なくないのではないでしょうか。選挙権が20歳から18歳に引き下げられる法案が今国会で成立する見通しとなりました。社会に対する責任を、これまでより早くから認識することになる若者たち。その目に選挙権の引き下げはどのように映るのでしょうか。

安倍首相は「若者の声が政治に反映されることは大変意義がある」と17日の参院本会議で述べていますが、示された選択肢に対して若者が正しい答えを導き出せるかは別問題です。

各政党が若者に媚びるだけの政策を打ち出してしまうことは考えられますが、若者重視になっていくことは年代間配分格差の是正につながり良い方向に進む期待はあります。しかし、政策を真剣に見比べるときに必要な当事者意識が、現代の若者には欠けていないか気になります。18歳であればまだ親の庇護のもとにある方が多く、自らの生活と政治が分かちがたく結びついていることを実感するのは難しいのではないでしょうか。筆者は親元から通う大学生です。これまでに数回の国政選挙に参加してきましたが、いずれの選挙でも各党のマニュフェストが現実の生活に結びついているという実感がなく、自分のための1票だと自信を持って投ずることが出来ませんでした。

勉強することで考え方が深まることに異論はありませんが、考え方が根本的に変わるのは自分が置かれている環境が変わった時だけのように思われます。選挙権年齢の引き下げを機に若者への政治教育が拡充していくとしても、それだけで若者の意見が反映される社会が実現していくのでしょうか。世の中を変える力はまだまだ法案をつくる側にあると思います。

【参考記事】
2月18日付 日本経済新聞朝刊1面「18歳選挙権 成立へ」 
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