危険な地域にジャーナリストが入ることの是非

ISISによる日本人の人質事件は、「殺害」という最悪の結末を迎え、国内ではこれから検証作業が進んでいくと考えられます。今日はあらたにすでも、「危険な地域にジャーナリストが入ることの是非」を考えたいと思います。

内戦が続いているなどの理由で治安が安定していない国・地域で、ジャーナリストが誘拐されたり殺害されたりする事件はこれまでも起こってきました。その度に「自己責任論」が唱えられ、「危険な地域には行くべきではない」「いや、状況を伝えるのが報道の役割だ」といった議論が行なわれました。

朝日新聞の記者は、先日からシリアに入って取材活動を行なっています。現在シリアは外務省から発表されている渡航情報(危険情報)の中で最も厳しい「退避勧告」地域に指定されており、2012年3月以降、日本人外交官ですら退去している地域です。記者のシリア入りは、世論や政治家にとどまらず「身内」である他のマスコミからも非難の声が上がりました。

4日付けの朝日新聞(大阪版)では、危険地域で取材する際の安全確認の仕方についての記事が掲載されています。それによれば

移動や取材の安全が高い確度で確保できること、ニュースの重要性があることなどを踏まえて判断しています。

治安状況は、外務省情報に加えて、現地当局や地元有力者の最新情報をもとに検討し、現場に行く前に本社編集幹部が判断しています。

特派員の多くは、英危機管理会社の危険値研修で誘拐や爆弾テロも想定した実地訓練を積んでいます。

とのことでした。そして記事はこのような言葉で結ばれています。

どんなに注意してもリスクはゼロにはなりません。それでも取材をするのはなぜか。虐殺や人道被害では、現地で記者が取材をすることが真実にたどりつく限られた方法だからです。内戦下の人々の実態を知っていただくことは被害を抑止することにもつながると確信しています。今回の事件で、中東地域での取材の危険性はさらに高まったと受け止めています。報じることの重みを踏まえながら、慎重に判断していきます。

日本で暮らしている私たちは、誰か伝えてくれる人がいなければ、遠く離れた地域のことを知ることができません。誰も伝えてくれる人がいなければ、私たちは「危険な地域」の問題に無関心になり、「危険な地域」があることすら気に留めなくなるでしょう。私はニュースを読むのが好きなので、アレッポからのレポートも高い関心を持って読みました。一方、ISISの声明にもあったように、日本人がテロの標的になるリスクは高まっている状況で、邦人が「危険」と分かっている地域に自ら入り、そこで万が一のことが起こってもいけません。ただ記事を読んで、事件の表面的なことだけを考えるのでなく、その背後にある情勢にも注意を払って考えていきたいです。

皆さんは、ジャーナリストが危険地域に入って取材することをどう考えますか?ご意見お待ちしています。