WASHOKUニ注目セヨ

SUSHI、RAMEN、IZAKAYA――

留学していたカナダ・トロントの街中でよく見かけた文字です。世界中の多様な食文化や人が集まってくるカナダには、日本食レストランも数多く存在していました。現地に住む邦人向けかと思いきや、地元のカナダ人や留学生も多く利用していました。

滞在中、日本食ブームは身近なところでも感じました。友人と食事に行くとき、決まって候補に挙がるのは寿司屋です。食べ慣れた味とかけ離れているものや日本で食べるより高価なものばかりで、正直なところあまり食べる気にはなれませんでした。でも、日本の食べ物が好きだと言われるとつい嬉しくなって、度々足を運んではお腹を満たしていました。

和食の厳密な定義はさておき。海外では知名度が高まる一方、日本では和食離れが進んでいます。農林水産省の17年の調査によると、「和食文化を家庭や地域で受け継ぎ次世代へ伝えている」人は38%にとどまっています。

驚くのは、東京の日本料理店「つきぢ田村」3代目の田村隆さんのエピソードです。小学校で、だしを使った普通のみそ汁と、みそをお湯で溶いただけの汁を食べ比べさせると、後者をおいしいという子が3割弱いたと言うのです。要であるだしをおいしいと感じられない人の多さに衝撃を受けました。

料亭などの業界団体「全国料理業生活衛生同業組合連合会」によると、15年度に加盟している料亭や日本料理店の数は2825。89年度の約8000から約25年の間に3割ほどにまで減少しています。本格的な日本料理は値段が高いという印象が強まっていることや後継者不足が大きな理由です。

同連合会会長で京都の老舗「美濃吉」10代目当主の佐竹力総さんは、次のように指摘しています。

日本人は年中行事や儀式の際に食事を共にして絆を深めてきたが、そうした文化は核家族化や都市化で衰退した。

和食の基本は、様々な食材を組み合わせて栄養バランスの良い献立を考えること、旬の素材を生かす調理法やタイミングで提供することです。ですが、「個」の好みやペースを尊重するようになり、「手間がかかる・面倒」な印象の強い和食は敬遠されやすくなっています。手軽に食べられるパンやパスタといった洋食などの選択肢が増えていることも背景にあります。単なる「食」の問題ではなく、家族のあり方や自然との向き合い方が問い直されているのです。

朝はご飯派。夕食には一汁三菜。お腹が空いたら豆腐と納豆。そんな私からすると、国内での日本食への関心が薄まっている現状には胸が痛みます。今月、「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録されてから5年を迎えました。東京五輪を控え、海外からの注目が集まる今こそ、改めて自国の食について考えてみませんか。

これまでの日本料理は、海外の食材や食文化を受け入れて発展させてきました。従来の良さを生かしつつ、時代に合わせた形は何なのか。その模索がこれからの和食に求められています。

 

参考:

28日付 読売新聞朝刊(東京12版)11面(解説)「和食離れ 家族の変容で」