12月12日という日付を見て、何か思い当たることはないでしょうか。「いい字一字」と読むことが出来ると言えば、多くの人がピンとくるでしょう。そうです、「今年の漢字」が京都・清水寺にて発表される日です。
毎年の恒例行事として報道されますが、そもそもいつ、どういう意図で始まったのか知っていますか。公益財団法人日本漢字能力検定協会が、1995年から漢字の素晴らしさ、奥深い意義を伝えるために始めました。そして、1年の出来事を清めるとともに、新年が明るい年になることを願い、清水寺で奉納の儀式を行います。
9日の読売新聞朝刊に「今年の漢字」23年分を、京都市東山区にある漢字ミュージアムにて展示すると記載されていました。数ヶ月前のことですが、わたしはこの漢字ミュージアムにとても興味を持ち、実際に足を運びました。場所は八坂神社の目の前、祇園と呼ばれる地域にひっそりとたたずんでいます。
施設に入ると、意外にも多くの児童が学びに来ていました。甲骨文字が掘られている本物の亀の甲羅や、歴史の教科書で見た木簡などを触れることが出来るので、多くの子が手にとって見ていました。他にも、漢字で書かれた国名を当てるクイズや、自分の名前を万葉仮名で表すとどうなるのかなど、子どもだけではなく大人も楽しめます。
2階では体験コーナーがズラリと並び、タッチパネルやカメラを使うゲームもあり、非常に刺激的な空間でした。そこで、模擬漢検の採点をするおじいさんに出会いました。わたしの解答用紙を見るなり、「こりゃ読めん」「失格だ」と筆跡について厳しく指導しました。
そして採点が終わると、彼はこう言いました。
「今の若い人は書くという行為をしないね。目で見る字は増えたけど、意味も理解せずに機械が勝手に変換してくれる。昔、ある総理大臣が漢字を誤って読むことで有名になっていたけど、あれにはがっかりしたよ。今の時代だからこそ、手で書くということを忘れないでほしい」
年齢を重ねると、自分の手で字を書くという行為をしなくなりますが、そのような機会を設けずに過ごすのはどうでしょうか。感謝の手紙を綴る、年賀状で新年の挨拶をする、今ではメールで済ませてしまいます。
時間があるときに、漢検の問題を解いてみて下さい。きっと「あの字、どうやって書くんだっけ」と悩むはずです。漢字を読み書きできる大切さを学んだ休日でした。
参考記事:
9日付 読売新聞朝刊 29面(京都)「今年の漢字 23年分」
公益財団法人日本漢字能力検定協会HP(https://www.kanken.or.jp/project/edification/years_kanji.html)