今日、街で赤いリボンを見かけませんでしたか? クリスマスに向けた飾りではありません。私たちが知るべきシンボルです。
今日12月1日は「世界エイズデー」。蔓延防止と感染者への差別や偏見の解消を目的に、世界中でエイズに関する啓発活動が開かれます。赤いリボン(レッドリボン)は啓発活動のシンボルマークなのです。
「私には関係ない」と思う方もいるでしょう。しかし、発症原因であるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染症は結核・マラリアと並ぶ世界三大感染症と言われています。厚生労働省エイズ動向委員会によると、昨年の国内での新規患者数は413人、HIVの新規感染者数は976人です。いずれも前年と比べて減少していますが、ここ10年間の数を見てみると毎年1400人ほどが新たに感染している現実があります。
▲国内HIV感染者数と国内エイズ患者数の推移。厚労省エイズ動向委のデータから筆者作成。
主な感染経路は性行為による感染、血液感染、母子感染です。日本では性行為による感染が圧倒的に多いと言われています。ここで気を付けたいのは、飛沫感染はしないということ。せきやくしゃみでHIVに感染することはありません。性行為の際にコンドームを使えば、感染を避けることができます。残念なことですが、男性同士の性行為による感染例が比較的多いためか、同性愛者に対する根強い偏見があるようです。
誤解しないでください。感染のリスクは誰にでもあります。「同性でセックスするから感染する」のではなく「コンドームをつけないでセックスするから感染する」のです。もし心当たりがある方はHIV検査を受けてみましょう。最寄りの検査機関を『HIV検査相談マップ』( https://www.hivkensa.com/ )から検索できます。
最近、私の友人もHIV検査を受けたそうです。友人いわく「自分はたとえ0.数%の確率でも『もしかしたら』と考えると、検査結果を待つ数時間は生きた心地がしなかった」(結果は大丈夫だったそうです)。たしかに、友人の不安も理解できます。「エイズに感染すると死んでしまう」と考えるかもしれません。大ヒット中の映画「ボヘミアン・ラプソディ」の主人公で、イギリスの伝説的ロックバンド「Queen」のボーカリストだったフレディ・マーキュリーさんもエイズの合併症により45歳でこの世を去りました。「HIV=不治の病」と考えるのも無理はないです。
ところが最近はHIVに感染しても普通に生活できる時代になりました。早期発見すれば、薬で症状の進行を抑えることができます。以前のような「不治の病」ではなくなりました。コンドームによる予防、検査による早期発見、正しい知識。この3つで感染リスクは大きく減らすことができます。
性の知識を公の場で話すことに抵抗があるかもしれません。それでも性教育は不可欠です。私は以前「性と生徒」で書きましたが、お粗末な性教育は歪んだ性の形をはびこらせる恐れがあります。コンドームの着用だけでなく、性感染症に対する正しい知識を教えていけば、先述したエイズに対する偏見もなくなるはずです。
正しい性知識を身に付けよう。
世界エイズデーの今日、私は声高に訴えます。
参考記事:
1日付朝日新聞be1面「フロントランナー『性』の問題から『生』を問う」
同3面「『性教育とは自分を語ること』」
11月30日付日本経済新聞(電子版)「エイズの今 発症・他者への感染も早期治療で防げる」
参考文献
厚生労働省エイズ動向委員会「平成29(2017)年エイズ発生動向年報」
(http://api-net.jfap.or.jp/status/2017/17nenpo/17nenpo_menu.html )
公益財団法人エイズ予防財団
( http://www.jfap.or.jp/index.html )