遺恨が残るFA制度

プロ野球チームの東北楽天ゴールデンイーグルスのファンである筆者には、信じられないようなニュースでした。

埼玉西武ライオンズからFA(フリーエージェント)権を行使した浅村栄斗内野手が、楽天に入団することがわかりました。浅村選手は、チームのキャプテンでもあり、「山賊打線」と呼ばれる打撃陣の中軸を担う、リーグ優勝の立役者の一人でした。

Twitterを見ると楽天ファンからは驚きと喜びの声が。というのも、シーズン中は浅村選手によく打たれていただけに、自分たちの応援するチームの一員になることは思いもしない出来事だからです。一方、西武ファンからはFA制度がスタートした1993年以降、12球団最多となる17人目の移籍となったことから球団体制への批判や、獲得した楽天への批判、浅村選手に対し「裏切り者」というようなツイートが見受けられます。

FAは権利を行使すると、獲得を希望している球団と交渉し、移籍することができます。そして権利を得るためには一定期間1軍に登録されていなければいけません。もともと行きたかったところ、お金をたくさん払ってくれるところなど、ドラフト時には自ら選ぶことができなかった球団を、権利を行使することでようやく選択する自由が生まれるのです。

一方、ファンからすれば、入団時から応援していた選手が、活躍した途端他球団に行ってしまうのは、なんとも切ないものです。そのため、移籍することは悪であり、「生え抜き」でい続けることが正義といった考え方は、日本プロ野球ファンに強く根付いています。

以前、同じく西武から楽天に移籍した岸孝之投手が西武戦に登板した際には、ブーイングが起こるといったこともありました。このように、今の制度は、大切な選手を「奪った」「奪われた」といった対立構造を作ってしまいます。

では、海外はどのようになっているのでしょうか。メジャーでは一定期間が経過すると、選手が権利を宣言することなくフリーエージェント、すなわちどこの球団とも契約をしていない状態になります。そのため、移籍市場は日本よりも活発で、同一球団にずっと所属しているケースの方が少ないのです。

いずれにしても、今の制度のままでは、選手にとってもファンにとっても球団にとっても遺恨を残す結果になってしまいかねません。もう少し、憎しみを産まないための制度になることを期待したいです。

参考記事:
21日付 朝日新聞朝刊(東京12版)21面(社会)「FA浅村、西武から楽天へ」