大学3年生が就活を意識し始めるこの季節。夏休みには多くの企業や官公庁でインターンシップが実施され、大学でも企業の説明会が開催されています。
就活をこれから始める方にとって、理想の企業とはどのようなものでしょうか。社会的影響力のある大企業なのか、給料が良いのか、はたまた福利厚生がしっかりしている企業なのか。様々な希望があると思います。
中でも、自身の生まれ故郷へUターンして就職することを検討している方はいますか。大学進学をきっかけに都市部へ移ったものの、就職は地元企業で、と考えている人は筆者の友人にも何人かいます。東京や大阪などに集中する大企業にこだわらず、人口減少に苦しむ地方へ戻る若者が増えることは素晴らしいことです。
筆者の住む兵庫県もそんな自治体のひとつです。大都市・神戸を抱えるものの、今年1月現在の人口は約550万人と8年連続で減少しています。そこで県は来年1月から、県外在住の県出身者らを「県外県民」として登録する制度を始めます。登録者には電子マネーカードを発行し県産品の購入などで優遇する一方、移住を促す就職情報などを発信する仕組みを設けることで、毎年6,000人の登録を目指します。また、カードは民間の事業者と連携して発行し、登録者が利用した額の0.1%程度を企業版ふるさと納税として寄付してもらう仕組みも設けるようです。
県の人口は確かに減少しています。これだけを聞けば県の将来へ不安が募りますが、移住相談窓口のカムバックひょうご東京センターには2016年の開設以降、3,960件の相談が寄せられたということで、井戸知事は「兵庫への関心は落ちていない」と強調します。
兵庫県地域創生課は「県内の各地域と継続的な交流を促して愛着心を育み、県内への移住につながれば」と期待しています。確かに、愛着のない街にはどれだけ大都市でもわざわざ引っ越ししようとは思わないでしょう。鉄道を整備したり保育所を作ったりすることも重要ですが、人口減に悩む地方に足りないものは、そうした県出身者へのケアだと感じます。各県が自身の街へ愛着を持ってもらえるよう、ぜひ競争してもらいたいものです。
参考記事:
10日付 読売新聞朝刊14版31面(地域・阪神) 「県外県民 Uターン促進」