笑顔で学ぶ70歳の中学生

みなさんは、何のために学校へ通いましたか。友達を作るため。体育の授業が楽しみ。好きな人に会うため。どれも素晴らしい理由です。第一に教育を受けるためであるものの、それだけでない何らかの楽しさがなければ、朝から晩まで授業を受けることは苦行以外の何物でもないでしょう。

しかし、世の中には様々な理由から学校に行けず、中には義務教育課程も満足に学校へ通えないまま社会に出た人がいます。その理由はいじめや不登校、さらには戦争で学校へ行けなかったなど多岐にわたりますが、彼らを救済するために夜間中学が存在するのをご存知でしょうか。

実は筆者もこの存在をほとんど知りませんでした。きっかけは先日関西のローカルニュース番組での放送を偶然見たことです。大阪府の東大阪市にある長栄中学校の夜間学級が紹介され、そこでは16歳からなんと84歳までの「生徒」が一緒に授業を受けています。44歳の「生徒」はいじめにあったことで不登校になり、実に32年ぶりの学生生活だそうです。

特に心を惹かれたのは、70歳の男性でした。中卒で社会に出て、勉強嫌いから漢字はほとんど読めない。それでも、年齢の幅のある同級生とともに一生懸命勉強に励んでいました。「健康との問題やけど、卒業したら高校へ行って、大学に行こうかと思って」。嬉しそうに語る姿には、10代の若者に負けない明るさがありました。

何事もなければ15歳で中学を卒業し、高校へ進学するのはもはや当たり前。大学へ進学することも今では珍しくありません。どんなにレベルの高い大学でも、どんなに施設が充実していても、どんなに就職先が良くても、学ぶことに素直に楽しさを覚えられることに勝るものはないのだと最近感じるようになりました。

当たり前の教育サービスを本来の年齢で享受できなかったからこそ、そのありがたみを身に染みて感じるのかもしれません。暗い話題ばかりの最近、久しぶりに良い話を聞けたなと感傷に浸っています。

男性が記者に語ったセリフが今でも忘れられません。

「勉強することは光です。太陽みたいです。視野がパアーっと広がりますわ」

 

参考記事:

21日付 読売新聞朝刊13版 27面(特別面)「2019 進学特集」

MBS Voice特集「70歳おじいちゃんと22歳ネパール人女性は同級生…夜間中学に通う人々」