誰もが日に何度もお世話になるトイレ。近年、街中を歩くと、おしゃれで工夫が凝らされたデザインを目にします。利用するのはわずかな時間ですが、きれいで使いやすいと晴れやかな気持ちになり、お店に対しても好感がもてます。
飲食店に多く見られるのが、生理用品やマウスウォッシュなどのアメニティが置いてあるトイレです。持ち合わせていない時や席に置き忘れて来た時に助かります。単に用を足すだけでなく、化粧直しを目的に使用する機会も多く、あぶらとり紙や綿棒のサービスは嬉しい限りです。
個室を「身だしなみを整える場」と捉えている女性にとって、着替えをしたりストッキングを履き替えたりする場でもあります。設備が充実しているところで見るのは、チェンジングボードと呼ばれる着替え台です。普段は壁に立てかけるようにボードが設置されており、必要なときだけ床に倒して使います。限られたスペースに対応し、狭い個室内で着替えるのに便利です。
新しい機能を見るたび「こんな発想があったか」と感動させられる一方で、排泄音を消すための流水音を流す「音姫」もなく冷たい便器があるだけのトイレも少なくありません。それ自体に問題はありませんが、どうしても化粧や着替えにも使える多機能トイレに利用が集中しがちです。障害者団体などによれば、本来優先して使えるはずの車椅子利用者が長時間待たされることは多いそうです。
そもそも多機能トイレとは、何でしょうか。今朝の読売新聞によると、次のようなものを指します。
『車椅子対応の個室で、車いすが転回できるよう通常2メートル四方の広さがある。手すりやオストメイト(人工肛門等利用者)用汚物流し、介助ベッド、おむつ交換台などを備える』
近年、多機能トイレのニーズが高まっており、普及に向けた取り組みが進んでいます。JR東京駅には11か所設置されています。大阪メトロではHPで駅ごとの設置数や利用に便利な情報が公表されています。トヨタ自動車は、道案内アプリ「TCスマホナビ」を開発し、高速道路のSAやPA、道の駅、公共施設など約2万600か所の多機能トイレ情報を公開しています。
本来、多機能トイレは「障害者用トイレ」ではありません。一般的なトイレを不便に感じる、もしくは利用できない人が優先的に使えるトイレです。呼び方も「多目的トイレ」「優先トイレ」「だれでもトイレ」「みんなのトイレ」など様々です。
このため、健常者もいつでも利用できる印象を持ちますが、障害者向けと強調した表示をする施設が出てきました。必要とする人がいない時に健常者も使えるからといって、長時間の利用や非常識な使い方は許されるべきではありません。
2020年の東京パラリンピックを前にして、障害者やバリアフリーに注目が集まっています。ハンデがある人もない人も安心して過ごせる社会づくりに一人一人のマナーが問われています。
参考記事
24日付 読売新聞朝刊(東京12版)17面(くらし)「多機能トイレ 進む混雑対策」