史料保全の難しさ 水害で考える

豪雨の影響で大きな被害を受けた倉敷市の真備地区。図書館も例外ではありませんでした。26日付の朝日新聞朝刊では1面で、真備図書館の様子を写真付きで報じています。水に漬かった本は廃棄するしか無いとのことで、12万7千冊の片付け作業が始まっています。

その分はどうやって補充するのでしょうか。激甚災害に指定され、公民館や図書館の復旧には国から補助金が出る見通しが立ったと言いますが、本の購入にまで充てられるかは疑問が残るところです。

自身でも少し調べてみました。あまり具体的な例には辿り着きませんでしたが、ひとつの手がかりとなったのが、国立国会図書館の運営するポータルサイト「カレントアウェアネス」です。もともとは図書館学や図書館情報学への最新情報を発信するポータルサイトで、今回の西日本豪雨を機に図書館以外にも対象を広げて資料復旧の情報を集めています。

調べていて感じたのは、歴史資料の修復に力を入れている団体が多いということでした。中でも「史料ネット」と呼ばれる団体が各地域と協力して、水損した史料の修復作業を実施していることを知りました。

真備地区には、市役所の支所にも公文書や古文書の保管場所がありましたが、こちらはすべての資料が無事だったと言います。この差は、書架などの位置だったようです。図書館は地上1階にすべてを配置、対して市役所支所の歴史資料整備室では2階に置いていました。

史料ネットと情報を共有しているボランティア団体「岡山史料ネット」は現在、図書館に残っている歴史資料の救出にあたっています。岡山大学で本格的な修復作業がされるそうです。

図書館の館長は「真備の文化の中心がこんなことになって悲しい」と肩を落とし、一方、歴史資料整備室の関係者は「資料を滅失すれば“倉敷の歴史”を失いかねなかった」と安堵の声。災害の復旧ではインフラや建物の復興に目が向きがちですが、長期的には文化や歴史の保全も大切なはずです。

災害によって、日本ではこれまでも数多くの史料が失われてきました。気候や土地柄から仕方ない面もあると思います。しかし、それを最小限に抑えることが求められます。今後また豪雨災害があっても同じような被害を出さないよう、書架のかさ上げなどに取り組む必要があります。

参考記事
26日付 朝日新聞朝刊(東京14版)1面「12万冊 悲劇」
26日付 朝日新聞デジタル「地域の文化支えた12万冊廃棄「悲しい」 真備の図書館」
21日付 山陽新聞デジタル「豪雨被災した歴史資料を救出 岡山史料ネット 真備で活動本格化」
23日付 山陽新聞デジタル「倉敷・真備で保管の古文書無事 29万点、支所浸水も水没免れる」