政治家は現れては去る 創り出した問題は残る

イギリスのEU(欧州連合)からの離脱、いわゆる「Brexit」が揺れています。メイ政権は8日にEUとの今後の関係についての基本方針を発表し、経済圏から完全に離れることでイギリスの「自主権」を回復させる従来の強硬路線から一転、緊密な関係を維持する穏健路線へと舵を切りました。

しかし、これに政権内の閣僚の一部が反発。強硬路線を主張してきたデービス離脱相やジョンソン外相が相次いで辞任する事態に発展しました。特にジョンソン氏は、EUからの離脱の是非を問う2016年の国民投票の際に声高に主張し、強硬派の旗振り役でもありました。

一方、頭を悩ますのはEU側も同じです。イギリスの迷走ぶりへの発言が相次いでいますが、中でもトゥスクEU大統領のツイッターでの投稿が印象的でした。

―Politicians come and go but the problems they have created for people remain.

(政治家は現れては去るが、彼らが創り出した問題はそのまま残るのだ)

トゥスク氏はまた、「Brexitという考えがデービス(離脱相)とジョンソン(外相)とともに消えないことが悔やまれる」とも書き込み、反響を呼んでいます。

政治家というものはこういうものだ、という一種の諦めにも似た悲観論に聞こえてしまいます。確かに2年前の国民投票では「EUから離脱」というイギリス国民の意思が表明されましたが、一部で離脱派の主張に誤りがある、とも言われています。一方、ここで「やっぱり離脱するのをやめた」とちゃぶ台返しをしてしまうと、そもそも主権者の意思を直接問うた国民投票の価値自体に疑問符が付きかねません。

今更ながら、Brexitがもたらしたのは、単に経済的な課題だけではなく、政治的な理念への挑戦でもあった気がします。トゥスク大統領の言葉は、何もこの件に限らず、日本やそして世界の政治家に当てはまるのではないでしょうか。

参考記事:

11日付 読売新聞朝刊14版 7面(国際)「英離脱交渉 混迷増す」