公文書管理のあり方が問われています。
森友・加計学園の文書書き換えやPKOの日報廃棄、そして旧優生保護法下の強制不妊手術と、このところ公文書が焦点となった政治問題が次々と起きています。
そんななか首相は、28日の衆参両院の予算委員会集中審議で「問題点を洗い出して実効性のある対策を追求したい」という考えを示しました。29日付の読売新聞朝刊ではこの言葉を1面トップで報じています。記事によれば、与党は先月、公文書の電子保存を原則とする提言を首相へ提出していたといいます。これを受けて今回、公文書の管理状況を省庁横断で一元的に監視するポストの新設、電子決裁の推進などを検討しているとの内容でした。
公文書は「公(おおやけ)」の文書であり、官庁等が職務上作成したすべての文書が当てはまります。おおやけという言葉には公平・中立といった意味がありますが、ここでは社会全体に関わるという意味で使われます。最近は情報公開の流れもあって公表される文書も増えてきましたが、筆者を含む一般人がそのような文書に直接触れる機会はなかなかありません。
一連の問題が明るみに出たことで、公文書に触れる良い機会になったのかもしれません。
23日、財務省は森友学園との交渉記録文書や改ざん前の決裁文書をホームページで公開しました。しかし、当初公開していた文書に不備があり、3時間後に削除。翌朝に改めてアップしていました。不備とされたのは「黒塗り」の部分。本来、プライバシーの観点からマスキングの目的で黒塗りにしていた部分が、電子処理で上塗りしただけだったためにすぐ外せるようになっていたのです。削除されるまでの3時間の間にダウンロードできた人はおそらくごく僅かで、黒塗りの中身を知ることができるのは一部の人間だけのはずでした。
それが28日になって、事態はネットの世界で大きく動きます。該当するデータがインターネット上に残っていることを、ネットニュースが報じたのです。3時間の間に取得されたデータが「魚拓」とよばれるサイト履歴の記録サービスに刻まれていました。一度アップロードされたデータを完全に消すことはできないとされるネットの世界を見せ付ける出来事でした。
実は最初に交渉記録文書が公開された際、全国紙で唯一、毎日新聞がデータをファイルにまとめて公開しました。結果として、財務省が削除し閲覧できなくなっている間も毎日新聞のデータは残る形となりました。これもネットの威力を示しています。
文書の公開を推進する動きは止まりません。大阪ではおととし、政治家の収支報告書を閲覧できるサイトをつくろうと、「公益財団法人政治資金センター」が発足しています。政治家の多くが政治団体を持ち、収支報告書は官公庁や自治体に提出されます。一応は公開されているということになりますが、一般の人が目にすることはめったにありません。それらを調べることができるようサイトを整備し、政治資金の透明度を高めようとする取り組みです。
公文書を管理する、とは簡単に言えますが、情報の取扱いは非常に難しいものです。今こそ、ネットの力を活用して、もっと一般市民が文書に触れられるような仕組みづくりが必要であるように思います。論じるべきは、一元管理ではなく透明性なのではないでしょうか。
参考記事:
29日付 読売新聞(東京13S版)1面「公文書 一元監視ポスト 首相検討 電子決裁を推進」
29日 週刊朝日(AERAdot.)「森友4000枚文書黒塗り剥がすと、稲田元防衛相の夫や二階幹事長の名前 財務省痛恨のミス」
28日 Buzzap!「黒塗りを外せる財務省の森友文書(交渉記録)、ウェブアーカイブからダウンロードできるようになってしまう」
24日付 毎日新聞(東京14版)31面(社会)「HP公表後に財務省が削除 交渉記録」
23日 毎日新聞「森友学園 財務省が国会に提出した交渉記録のPDF」