異論の排除 凶弾と変わらず

われわれは日本人である。
日本にうまれ 日本にすみ 日本の自然風土を母とし
日本の伝統を父としてきた

これまで反日世論を育成してきたマスコミには厳罰を加えなければならない。
特に 朝日は悪質である。
彼らを助ける者も同罪である。
以後われわれの最後の一人が死ぬまで この活動は続くであろう。

強い「愛国心」がにじむ書き出しと、過激な思想に基づく挑戦的な内容。これは、1987年5月3日に起きた朝日新聞阪神支局襲撃事件の3日後、通信社に届いた犯行声明文の一部です。

兵庫県西宮市の朝日新聞阪神支局に散弾銃を持った男が侵入し、記者2名に発砲。
小尻知博記者(当時29歳)が死亡、犬飼兵衛記者(同42歳)が重傷を負いました。
阪神支局襲撃事件をはじめ、1987年から90年にかけて起きた朝日新聞社を主な標的とする数件の発砲事件などは、犯行声明文に書かれていた「日本民族独立義勇軍赤報隊」の名から「赤報隊事件」と呼ばれています。

昨年5月3日、筆者は朝日新聞阪神支局を訪れ、小尻記者の遺品や当時の新聞記事を実際に見てきました。
弾痕と血痕が残った小尻記者のブルゾン。銃弾でひしゃげた犬飼記者のペン。

「一体誰が」「理由は何だ」

事件を伝える記事は、勤務中の記者が突然射殺された衝撃を大々的に報じていました。
言論の自由を揺るがした記者殺傷事件に対し、会社の垣根を超え、多くの報道機関が「凶行に屈しない」との意思を表明しています。


△兵庫県西宮市の朝日新聞阪神支局。

(昨年5月3日筆者撮影)

 

△阪神支局襲撃事件を伝える記事。

(朝日新聞阪神支局で筆者撮影)

事件から今日で31年。
今、憲法改正についての議論が進んでいます。

安倍晋三首相は昨年、2020年の改正憲法施行を目標に掲げました。
今月1日の記者会見では「この1年間で改憲議論は活発化したと思います」と述べています。

確かに護憲・改憲の議論を目にする機会は増えました。
書店では憲法関連の書籍が平積みにされています。
護憲あるいは改憲を訴え、街頭で集会をしている市民の姿もちらほらと見かけるようになりました。

一方で心無い言葉を目にする機会も増えました。
インターネット上では、護憲派と改憲派の応酬が目につきます。護憲を主張すると「クソ左翼」「反日」「日本から出て行け」といった暴言が返ってきます。
改憲を主張すると「ネトウヨ」「戦争屋」「クズ」などと中傷されます。

もちろんこれらはごく一部の例です。
しかしながら、特定のイデオロギーに縛られ、異論を徹底的に排除しようとする姿勢には違和感を覚えます。

憲法21条は表現の自由を保障していますが、果たして相手を否定し、論難し、力ずくで組み伏せようとすることに何の意味があるのでしょうか。
そんな一方的な言葉は、31年前の散弾と何ら変わりません。

参考記事:
1987年5月15日付朝日新聞朝刊(東京13版)6面 「走る衝撃 怒り抑え報道」
2018年5月3日付朝日新聞朝刊(東京13版)27面 「17歳の投稿 過剰な賛否」
関連記事1、2、6、7面
同日付読売新聞朝刊(東京13版)3面(総合面)「憲法論議 再加速図る」

編集部ブログ