停滞は許されない。それにしても

筆者の住む兵庫県西宮市で15日、出直し市長選が行われました。過去の最多記録に並ぶ6人が立候補し、元衆議院議員の石井登志郎氏が初当選を飾りました。

西宮市は、前市長の今村岳司氏が今年1月の仕事始め式で記者に「殺すぞ」「落とし前つけさせるからな」などと発言し、市議会や市民から批判を浴びた末、2月に辞任したことで全国の注目を集めました。それに、政務活動費の不正流用が疑われ、記者会見で号泣した元県議会議員の選挙区でした。

一部の不正や問題行動で、西宮市民全体へのイメージが低下しかねない状況でした。そうした点では、前市長の辞任から2カ月に及んだ政治空白がようやく終わった今、新市長は地域が抱える多くの課題に対して迅速に行動し、関西での「住みたい街1位」という評価を守り抜いてほしいものです。

市長選の投票率は37.52%でした。ちなみに前回は36.41%で、大混戦だったにもかかわらず、わずか1ポイント増えたに過ぎませんでした。自治体の選挙は国政に比べて低くなる傾向にはありますが、市民の5人に2人足らずしか投票所に行っていない計算になります。前市長の辞任の直後、街角インタビューで多くの市民が「けしからん」と言っていたはずです。その結果がこの数字とは、なんとも皮肉なものです。

候補者が乱立した今回は多様な主張や人柄の中から市政を託す人物を選ぶ絶好の機会だったはずです。前回の轍を踏まず、「まとも」な市長を決めるつもりだったなら、選挙に行かない、なんて言わずに投票所へ足を運んでみるべきだったと思うのですが。

18日付読売新聞朝刊 35面(地域)「「謙虚な姿勢で」石井・西宮市長 初登庁で抱負」