入学式が終わり、私の通う大学ではオリエンテーションが始まっています。授業が始まる前のこの期間、ガイダンスや各種の行事に出席するために多くの新入生が集まります。このため、各部活動やサークル団体は新歓活動に大忙しです。ビラ配り、声かけ、パフォーマンス、食事会、説明会、体験会などなど。上級生はあの手この手を使って1年生を勧誘します。
私の所属する合唱団も、例に漏れず、総動員で呼び込みにあたっています。配布するチラシには、紹介の文やイベントの詳細、そしてQRコードが二つ。こちらを読み取ると、公式HPと新歓用Twitterアカウントにアクセスする仕組みです。調べるよりも早く、正確で、簡単である利点を生かし、少しでも多くの人に見てもらおうという狙いがあります。また、紙面では伝えることのできない、演奏の様子や合唱の魅力をアピールする目的もあります。
こうしたQRコードに紙媒体の限界を乗り越える可能性を見出し、活用を提唱するのが東京大学名誉教授の石井威望さんです。2000年11月に「IT(情報技術)基本戦略」を打ち出したIT戦略会議のメンバーを務めました。文章、写真、図で説明しても伝えきれなかったことも、QRコードを読み取り動画で伝えればわかりやすくなる、というのです。たしかに、スマートフォンやタブレット端末が広く普及した現代、大きなポテンシャルを秘めている技術と言えます。
しばしば、電子書籍が紙の本に取って代わるのではないかとの議論があります。新聞もオンライン化が進んでいます。それでも、私たちの暮らしの中に紙媒体は溢れています。それは、情報量やその目的、届けるターゲット層などによって両者が及ぼす効果が異なるからです。
インターネットはどこにいても気軽に情報に触れられますが、溢れる情報の中から必要なものを選ぶ難しさや一度に表示できる情報量の少なさが欠点です。一方で、紙媒体はかさばるうえ限られた情報しか手に入りませんが、一度に全体を俯瞰して見ることができます。紙に限界があるのは確かですが、それをIT技術で補うことができれば、まさに鬼に金棒です。
最近では、QRコードによる電子決済が普及しつつあります。LINEやFacebook、Twitterなど多くの人が利用するSNSでも、それぞれのアカウントをQRコードで表示できるようになっています。必ずしも革新技術がそれまでの古いものを潰すわけではなく、むしろ両者を掛け合わせることで新しい可能性が生み出される、そんな例をここに見ることができます。
あらたにす公式Twitterアカウント
参考文献:
5日付 読売新聞朝刊(東京12版)10面(投書)「QRコード 本の限界破る」