以前から、更迭の噂が絶えなかった国務長官ティラーソン氏がトランプ大統領から解任されるというニュースが入ってきました。原因は、対北朝鮮に対する意見の不一致とされています。後任は、現CIA長官である共和党系のマイク・ポンペオ氏が起用されるようです。
ポンペオ氏は北朝鮮の核問題を優先的に取り組んできた人物で、長官就任後に北朝鮮を専門に分析する部署を新設した経緯があります。しかし、政治的には「ティーパーティー」に所属するなど強い保守派であるため、彼の政治性を疑問視する米メディアもあるようです。
「米朝が首脳会談をするのではないか」と最近、話題になっています。実際に行われれば、どのような取引が行われようと日本が介入する余地はありません。「成功したとしても日本にとって都合の悪い状況になりそうだ」との悲観的な見立ても聞かれます。
その交渉のテーブルで北朝鮮側が示す思われる要求項目の一つに「国連軍」の存在があります。よく「朝鮮戦争は休戦状態で終わっていない」と言われますが、確かに53年に結ばれたのは休戦協定であり「終戦」は迎えていません。そのため、朝鮮戦争時に組織された臨時の国連軍はいまだに残っています。米国を中心とする豪、英、仏などの16ヵ国が参加しており、韓国と日本にその司令部が置かれています。日本も国連地位協定を結んでいるため、国連軍(現8ヵ国)の駐留や有事の際の支援を約束しています。
ここで問題になってくるのは、「地位協定に署名していない韓国軍が日本に駐留ことになったら」という問題です。有事となった場合を考えてみましょう。韓国領土内に自衛隊が派遣されることはないにしても、韓国軍側が日本側の支を求めるのは明白であり、日本側が集団安全保障の中で拒絶するのは難しいと思います。
そうした状況で日本国民の理解をどれだけ得られるかが重要になってきます。国民感情も対立した中で、この問題をないがしろにしたままだと、双方には反韓、反日感情がより膨れ上がるのではないでしょうか、
こうした課題は普段、在日米軍の問題に隠れてあまり騒がれていません。しかし、よりねじれた状況になる前に解決策を考えておかないと、将来の不安はより大きなものになることでしょう。
参考記事:
14日付 日本経済新聞朝刊(13版)7面(オピニオン)「米朝取引、見たくない悪夢」
同日付 読売新聞朝刊(14版)9面(国際)「米朝会談へ強硬派起用」
富澤輝著 『軍事のリアル』 新潮新書 p.131
外務省 朝鮮国連軍地位協定 http://www.mofa.go.jp/mofaj/na/fa/page23_001541.html