【特集】市長辞任に思うこと

最近、自宅のポストに投函されるチラシに変化がありました。市議会議員の日ごろの政治活動を報告するチラシが増えたのです。

筆者の住む、兵庫県西宮市の市長だった今村岳司氏が20日付で辞職しました。今村市長と言えば、今年初めに市職員への挨拶の後に、取材記者へ「殺すぞ」「落とし前つけさせるからな」などの暴言を吐いたり、昨年の市のイベントで中学生に「学校でタバコを吸っていた」「警備員を成人向け雑誌で『買収』した」など自身の学生時代の武勇伝を語ったりするなど、その言動がたびたび物議を醸し時には批判を浴びました。

市議会では市長辞任の前に、市長の退職金を3割減らす条例案を審議する方向で検討していましたが、市長はこれに反発し任期を満了することなく辞職しました。

今村市長は京都大学法学部卒業後、リクルート社に入社。その後、退社して西宮市議会議員選挙に無所属で出馬し、最年少の26歳でトップ当選しました。議会初日には茶髪で髭を剃らず、ピアスをつけて現れるなど異彩を放っていたそうです。以後4回の市議選で連続当選を果たし、うち3回はトップ当選でした。

(2月20日付朝日新聞「暴言・西宮市長の辞職、市議会が同意」より)

20日、今村氏はブログを更新し、「市政に瑕疵なく、罪を犯したりしたわけでもないのに、議会が私の退職金について議論することには、何の道理もない」と批判したうえで、退職金減額の条例案を辞職の理由としました。

彼が新聞記者に暴言を吐いた事実は変えられないし、その内容は決して許されるものではないでしょう。しかし、それが果たして市長の辞任という「落とし前」で片づけるべきことなのか、甚だ疑問です。「いや、そうはいっても暴言を吐かれた記者がかわいそう」と指摘されるかもしれません。しかし、それは「市長対記者」の話であって、それ以上でもそれ以下でもないのではないでしょうか。

筆者は今村氏のFacebookを毎回見ています。それは単に自分が住む市のトップの政治活動を見たい、というだけでなく、たびたびマスコミから批判される市長が、そんなに悪い人とは思えないからなのです。市民との公聴会に積極的に参加したり、市内のパティシエが開くお菓子の園遊会の写真をたくさん載せたり。はたまた市役所で結婚式を開催し司会を務めたり、もしくは東京・霞が関へ出向いて陳情したり。少なくとも何をしているかわからない、形だけの市長ではなかったと思います。

何はともあれ、市長は辞任しました。今後、市長選への立候補者が現れ、政策論争を展開するでしょう。前述の政治活動報告のチラシを手にする機会も増えそうです。速やかに後任の新しい市長が誕生し、速やかに市政を再起動してほしいものです。

市議時代の彼のセリフがとても印象的でした。「道路を広げたりカーブミラーを付けたりする政治に『お客さんが飽きている』政治状況を根本から変えたい」。(ちなみに今村氏はリクルート社在職中の癖から、市民を客と呼んでいました。)

参考記事:

21日付 朝日新聞朝刊(阪神13版)阪神「「政治・選挙 関わらぬ」」